今年度は研究期間の最終年度であり、これまでの研究成果を日本管理会計学会全国大会(2016年)で発表した。この報告では、1.炭素利益率(営業利益/温室効果ガス排出量)、2.営業利益、3.温室効果ガス排出量、と有形固定資産・研究開発資産との関係を分析した。 1.では、炭素利益率は有形固定資産と負の相関関係があり、研究開発費資産(研究開発費を資産化したもの)とは正の相関関係があることが分かった。2.では、営業利益は有形固定資産や研究開発費資産と正の相関関係を持つことが示された。なお、ここでは、分析対象企業を温室効果ガス排出量が多いグループと少ないグループに分けて分析を行ったが、2つのグループの間に差異を認めることはできなかった。3.では、温室効果ガス排出量は有形固定資産と負の相関関係があり、研究開発費資産とは正の相関関係があることが分かった。 1.は、私たちがこの研究プロジェクトとして着目することになった炭素排出量が、研究開発活動との関連見いだせた点が意義深い。2.は、温室効果ガス排出量の大きさが企業利益とは余り関係を持たないという点を明らかにできた点で意義深い。3.は、1.と類似した結果であるが、温室効果ガス排出量自体が有形固定資産・研究開発資産と関連している可能性があることを示すことができた点が意義深い。また、ここでも、温室効果ガス排出量が多いグループと少ないグループに分けて分析を行っているが、これら2つのグループ間に差異が無いことを見いだしている。これは、今後の研究において、別の観点から(例えば、業種ごと)分析を行う方がより深い知見を得られる可能性を示唆している。 私たちはこの研究を中小企業に拡張していくが、特に、中小企業における非財務指標の利用についてBSCのフレームワークの中でケーススタディを行えたことは、今後の研究にもつながると考えている。
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