研究課題/領域番号 |
26380599
|
研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
加賀谷 哲之 一橋大学, 大学院商学研究科, 准教授 (80323913)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 企業説明責任報告 / ESG / 統合報告 / コーポレートガバナンス / アカウンタビリティ / 受託責任 / 経済効果 |
研究実績の概要 |
平成27年度には、企業説明責任報告の経済効果を検討するため、既存の会計・開示システムをめぐる実証的な研究を整理し、その経済効果を測定するためのフレームワークや研究アプローチについて検討した。特に企業説明責任報告の構成要素として重視されるESG(Environmental, Social, and Corporate Governance)をめぐる企業の取り組みに対する評価について、先行研究をまとめたほか、企業関係者や証券市場関係者に対するインタビューを実施し、ESGが実際にいかに評価されているかなどについて検討を行った。特にESGにおいてはベンダー会社が提供している指標などCheck list方式の業績指標ではなく、各業界ごとのMaterialityなどを意識した指標が企業価値との関連性が高い点、企業ごとにその重要性が異なることからEngagementプロセスが重要である点、組織プロセスにそれを織り込むことができているかどうかが重要である点が確認された。さらに、企業が社会から期待されるESGの取り組みは各社をとりまく制度的環境(institutional realities)に基づき変わる可能性がある点が確認されている。 こうした点を受けて、ESGにかかわる先行研究やインタビュー結果を論文にとりまとめたほか、日本の会計・開示システムの特徴を明らかにする利益属性の検討結果を論文にとりまとめ、学会などで報告した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度には特にESGやコーポレートガバナンスにかかわる先行研究を取りまとめたほか、それらを基礎として、企業説明責任報告のあり方について、企業関係者や証券市場関係者に対してインタビューを行い、それらを分析するにあたって重要な視点や示唆を獲得することができた。またOpen UniversityのCarien.VanMourik先生などとの共同研究の可能性についても議論することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度には、これまで整理した先行研究のレビューやインタビューを通じて明らかになった点を基礎として、企業説明責任報告のあり方やその経済効果をめぐる実証研究を実施する。実施にあたっては、企業説明責任がどのような組織プロセスや体制で確保されており、それがリスク事象の発生などを通じて、どのような効果をもたらすかなどについて検討していく。加えて既存の会計・財務報告システムの役割を探るため、その利益属性についても検討していく。
|