研究実績の概要 |
本研究の目的は、低成長時代を迎えた日本経済の元、日本企業のリスクテイク行動・会計行動が、財務報告数値に及ぼす経済的影響を解明する点にある。具体的には、会計保守主義(条件付き保守主義及び無条件保守主義)がリスクテイク行動、株式リターン、株式リターン・ボラティリティに及ぼす影響を実証的に検証することを狙いとしている。 平成27年度の研究実績としては、海外への情報発信の一環として、日本銀行金融研究所の英文ワーキングペーパー("Effects of Accounting Conservatism on Corporate Investment Levels, Risk Taking, and Shareholder Value," Bank of Japan, Discussion Paper Series)を基にして、シドニー大学ビジネススクールでのセミナーにおいて研究報告を実施した。豪州の研究者だけでなく、イギリス、インドネシア、アメリカ、ニュージーランド、チリ、インドなど国際的な研究メンバーが集う学術的セミナーにおいて研究報告をすることができた。多くの貴重なコメント、アドバイスを頂くことができたのが大きな収穫であった。特に、無条件保守主義に関して、経営者の裁量の余地がいかほど残されているのかについて、活発な議論があった。各国のマクロの会計政策すなわち会計基準設定経由の影響、ならびに企業の属する産業経由の影響が大半ではないのか、という点については、さらなる検討が必要となろう。
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