研究課題/領域番号 |
26380602
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
大森 明 横浜国立大学, 国際社会科学研究院, 教授 (00340141)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 水道事業広域化 / 水会計 / 水報告 / メゾ会計 / 自然資源会計 |
研究実績の概要 |
広域環境行政についての特徴的な事例を調査し、日本では各自治体が運営する水道事業について、複数の自治体が共同で事業団等を設立して運営するようになってきた事実に着目した。本年度は、北見市、花巻市および紫波町が設立母体となっている岩手中部水道企業団について、先行研究を中心にその実態把握に努めた。 次に、広域環境行政の一展開ケースとして水資源マネジメントを取り上げ、オーストラリアにおける水資源管理から水道供給に至るまでの水会計の動向を調査した。同国では、マクロレベル、メゾレベルおよびミクロレベルのそれぞれのレベルにおいて水会計が展開されている。マクロレベルの水会計については、オーストラリア統計局が、SEEA-Waterを推計し公表している。その一方で、各州や市などの水資源管理主体に対して標準的な水会計情報の作成とその気象局への提出を求め、気象局が水系ベースの水会計情報を取りまとめて公表している。したがって、ミクロレベルの水会計が水系というメゾレベルの水会計へと連携しているといえる。元来、水資源マネジメントは、グローバルレベルというよりはローカルレベルの問題でありながら、管理主体である行政の管轄を横断する問題として理解されてきたため、オーストラリアの取り組みは、水系をベースとした管理主体を構築するとともに、水系ベースの水会計情報を収集する点で有益であると捉えている。 日本における水道事業の広域化は、まず各水道事業体の財政面での効率化が主目的とされて形成されてきているが、水資源マネジメントという観点から見ると、望ましい形に集約されているとも解することができる。現時点において、水道事業の広域化は、水道事業に利用される設備マネジメントでの役立ちが強調されているものの、例えば、オーストラリアにおける標準水会計制度を援用することの役立ちを考察する必要があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度は、日本における水道事業の広域化の現状の調査を行うとともに、水資源マネジメントにおいてマクロ、メゾおよびミクロレベルの水会計制度を導入しているオーストラリアのケースを把握した。そのため、研究成果としてはまだ公表に至っていないという点で、「やや遅れている」と理解している。 しかし、すでに日本企業における水報告の実態に関する論文を執筆し、それを国際ジャーナルに投稿し、現在、査読プロセスに入っていることを考慮すると、来年度以降、研究成果は定期的に公表していくことが可能であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、日本における水道事業の広域化の現状を調査する一方、オーストラリアにおける水会計制度の現状を把握したため、来年度以降は、水資源マネジメントと水道事業の広域化との関係を考察し、標準水会計制度の日本への適用可能性等を探ることにしたい。 最後に、平成26年度においては、ミクロレベルの水会計の一展開として、企業による水関連の情報開示の実態についても明らかにした。来年度は、企業における水情報と、水資源マネジメント主体との情報の連携なども考察の対象とすることにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度はオーストラリアにおいて半年間の在外研修を行っていたため、その間、実質的に科研費を使用することができなかったことが多額の繰越をもたらした原因である。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、昨年度購入予定であった分析用のソフトウエアの購入をはじめ、日本においては水道事業の広域化事例研究の対象である北見市およびオーストラリアの水会計研究のためにオーストラリアへの出張を予定している。また、今年度は、日本と海外での学会報告を予定しているため、関連する旅費支出も行われる予定である。
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