本研究では、昨今の国内外の情勢を踏まえ自然資本のうち、水資源に着目して研究を行った。まず水資源を取り巻く諸問題を整理することから始め、特に日本においては、将来における人口の減少や水の管理者である公的部門の財政悪化等の課題が今後一層深刻化する傾向を明らかにした。本研究では、2014年に成立した水循環基本法を踏まえ、経済性、効率性および有効性を兼ね備えた水資源マネジメントのあり方を検討し、国内外で重要性が認識されつつある「統合的水資源マネジメント」(Integrated Water Resource Managemewnt: IWRM)の考え方を日本においても取り入れる必要性を主張した。水循環基本法の制定に伴い、水資源管理主体においては、統合等の広域化が進んでいる状況にあるが、この広域化とIWRMの管理対象である「流域」とを連携させることが有益であるとした。水循環基本法においても、流域を対象とすることが良い方向性であることが述べられており、流域の水資源マネジメントに資する協議会の設置が推奨されている。 本研究では、広域化された水マネジメント主体において、水資源マネジメントに資するツールを検討した。元来、会計は、経済活動を定量的に測定し、内外のステークホルダーに伝達し、当該情報が各主体の意思決定に活用されるツールであることから、水資源マネジメントにおいても会計の仕組みを取り入れることが重要であると主張した。これまでに水マネジメントにおける会計手法として、国連の「水の環境・経済統合会計(SEEAW)」、オーストラリアにおける「標準水会計制度」および国際水マネジメント研究所が開発した水会計フレームワークを改良した「水会計プラス」がある。本研究ではこれらの3つの水会計手法を比較検討し、日本の水資源マネジメントに適した手法として、これらの3手法を連携したシステムを提示した。
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