研究課題/領域番号 |
26380603
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
李 健泳 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (60212685)
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研究分担者 |
長坂 悦敬 甲南大学, 経営学部, 教授 (00268236)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | BPM / 時間管理 / プロセス管理論 / プロセス構築論 / ITとBPM / TD-ABC / TOC |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、中小企業に適したビジネス・プロセス管理モデルを開発し、それを中小企業に実装させるところにある。すなわち、本研究では、中小企業が容易に導入できるビジネス・プロセス管理(Business Process Management: BPM)モデルを確立し、プロトタイプ(prototype)のITツールを中小企業に実装する学際的な研究を行う。このような研究目的を達成するために、具体的には①プロセスの管理論とITツールの一体化によるBPMモデルの確立、②本研究グループが開発したプロトタイプITツールの充実化と試行による適用要件の考察、③中小企業での実装によるBPMの導入研究の順で研究を進めて行くことにしている。 本研究の初年度である平成26年度では、「プロセスの管理論とITツールの一体化によるBPMモデルの確立」を目指し、中小企業現場の観察やインタビュー等を通じて段階的なプロセス構築・管理論とITソリューションの一体化を図るモデル開発を行った。モデル開発では、プロセス・ロスという概念を考案し、プロセス・ロスを取り除くために、①プロセスの組織化を重視する方向と②プロセスのドリルダウンによる効率化を重視する方向を、管理尺度を設けて段階的に進めるアプローチを取った。このようなアプローチを本研究ではロシア人形(Matryoshka doll)モデルと名付け、プロセスの展開をロシア人形のようにシンプルなプロセス構築と管理から必要に応じてより詳細なプロセスに展開する管理・構築論を確立した。ITツールにおいてもシンプルなプロセスの構築による業務の遂行からプロセスをさらに拡張できるIT構築論を確立し、プロセスの段階的な管理論とITツールの一体化によるBPMモデルを確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究目標はプロセスの管理論とITツールの一体化によるBPMモデルの確立であった。このような研究目標による研究成果は次の通りである。 プロセス管理論においては、段階的にプロセスを構築・管理していくロシア人形モデルを作り上げた。すなわち、部門・職能レベルのプロセス構築から企業全体レベルのプロセス構築へのプロセス組織化と親レベルのシンプルなプロセス構築から子レベルのプロセス構築へのプロセスのドリルダウンという両面でプロセス構築・管理するモデルを構築した。 さらに、ITツールの開発においては、SCRUMと名付けているプロトタイプITツールを開発した。このITツールの開発では、プロセス管理モデルと一体化させるために、プロセス管理レベルに合わせてITによるプロセスの構築が段階的にできるようにした。 本研究でのBPMモデルは、タブレットなどを使いインターネット上で遂行できるようにするとともに中小企業を対象としたものであるため、単純に業務活動の時間情報のみをWeb上でリアルタイムで把握し、それを管理モデルを使って原価管理、リードタイム管理と業務速度の管理ができるようにした。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究目標が概ね達成できたため、今後の研究推進方策ではプロトタイプITツールの充実化と試行による適用要件の考察、さらに中小企業での実装によるBPMの導入研究を行う予定である。 平成27年度の研究目標は前述のようにプロトタイプITツール(SCRUM)の充実化とその試行による適用要件の考察におき、中小企業の諸般事情をITツールでどう織り込むかを企業側と共同で研究を行う予定である。これは中小企業に適したITツールの開発を目指すものである。ITツールの開発においては、SCRUMにより得られるプロセスデータの分析ツールの開発も重要であるため、協力研究者および実務家の協力を得ながら行う予定である。特に、プロセス時間データを使って、オーダー別のリードタイム管理、プロセス別の業務速度と原価管理ができる管理モデルを構築するつもりである。 課題としては、企業のプロセスデータを円滑に確保できるかどうかであるが、仮想のデータを使ったシミュレーションも可能で有効であるため、一定の成果は上げられると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定とした共同研究者との企業訪問計画が企業側の事情により延期されたために発生した金額である。
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次年度使用額の使用計画 |
繰越し予算額は本研究を進めるのに必要な企業訪問調査費であったために、次年度は当予算を使い計画した訪問調査を行う予定である。したがって、繰越しの全額が予定の訪問調査により使われると予想される。
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