研究課題/領域番号 |
26380604
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
山口 直也 青山学院大学, 会計プロフェッション研究科, 准教授 (50303110)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | PFI/PPP / 意思決定 / コンセッション |
研究実績の概要 |
平成27年度はまず、PPP(Public Private Partnership)方式によるインフラ整備・運営事業について、下水処理施設と公立病院を対象として、PPP事業の意思決定と意思決定における管理会計の役割について考察を行ってきた。 このうち、下水処理施設については「下水道事業の経営健全化とPFI/PPP手法の活用」という論文を執筆し、既存施設の改築・更新に焦点を当てたPFI(Private Finance Initiative)/PPP事業の意思決定のあり方について論じた。その中で、稼働中の部分的更新が主となる既存施設におけるPFI/PPP手法の活用にあたっては、施設リスク(初期劣化リスク、瑕疵リスク及び期中劣化リスク)の取り扱いが重要な課題となり、施設リスクの管理を民間事業者に包括的に委ねるためには、事業者による将来の劣化推移と整備費用についての予見可能性を高めるために、発注段階において十分かつ適正な施設情報の提供を行うとともに、著しく劣化が進んでいる場合には、あらかじめ大規模修繕を行っておくことが求められることを主張した。 一方、公立病院については、「PFI/PPP事業における意思決定問題-高知医療センター整備運営事業と近江八幡市民病院整備運営事業のケース-」という論文を執筆し、我が国で最初に実施された病院PFI事業であり、相次いでPFI事業契約が解除された両事業における意思決定に関する問題点と、公立病院事業にPFI/PPP事業を活用する場合の意思決定のあり方について論じた。 両事業の問題点については、(1)PFI契約解除に至った直接的な原因、(2)PFI事業者が医療周辺業務を担うことに起因する問題、(3)長期契約であることに起因する問題、(4)契約内容の不備に起因する問題、の4点について論じた。さらに、公立病院事業にPFI/PPP事業を活用する場合に意思決定のあり方については、5段階に基づく意思決定構造のフレームワークを提示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では、日本企業が参入したPPP方式に基づく国際インフラ整備・運営事業について、事業ごとの特徴と課題を整理するとともに、各種マネジメント要素についてその特徴を明らかにしていくとしていた。しかし、実態を調べていくと、日本企業がメインプレーヤーとしてプロジェクト全般を統括する事業が極めて少なく、外国企業が統括するプロジェクトに、施設等の整備や技術供与といった部分的に参画するケースが多いことから、外国で実施されている事業に限定せず、国内で実施される事業も含めて、事業特性に応じたプロジェクト・マネジメントのあり方について考察を進めることとし、今年度は下水処理施設と公立病院におけるPFI/PPP事業について、各々の事業特性に応じた意思決定構造について解明することができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度である平成28年度は、当初計画では、日本企業が参入したPPP方式に基づく国際インフラ整備・運営事業について、プロジェクト・マネジメントの各種マネジメント要素のあり方について、その抽出と体系化を図っていくとしていた。しかし、「現在までの進捗状況」で記載した通り、日本企業がメインプレーヤーとしてプロジェクト全般を統括する事業が極めて少ないことから、外国で実施されている事業に限定せず、国内で実施される事業も含めて、事業特性に応じた、プロジェクト・ファイナンス、契約管理、収益管理、原価管理、リスク管理といったマネジメント要素のあり方について、その抽出と体系化を図っていく。具体的には、下水処理施設、空港、道路等におけるコンセッションを中心に分析を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費については、計画より書籍購入額が少なかったため、残額が発生した。 旅費については、計画より調査先が少なく、かつ、調査先が勤務先の近隣であったため、残額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額については、書籍の購入費や学会旅費・聞き取り調査旅費として使用する予定である。
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