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2015 年度 実施状況報告書

経営者の会計的裁量行動と実体的裁量行動の代替関係及び抑制に関する実証分析

研究課題

研究課題/領域番号 26380610
研究機関神戸大学

研究代表者

榎本 正博  神戸大学, 経済経営研究所, 准教授 (70313921)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード利益マネジメント / 会計的裁量行動 / 実体的裁量行動
研究実績の概要

平成27年度は次の分析を行った。
・前年度の会計的裁量行動から実体的裁量行動への以降を検討したが,本年度はさらにこの分析を監査の質を考慮に入れて分析を行った。具体的には,米国での会計スキャンダル及び上場企業会計改革および投資家保護法(Public Company Accounting Reform and Investor Protection Act of 2002,またはSarbanes‐Oxley act,以降SOXとする)の成立及び金融商品取引法(以降J-SOXとする)の成立が,わが国の利益マネジメントに影響しているかどうかを監査の質の視点を追加して分析を行った。これについては2つの考え方がある。(1)わが国の監査法人と提携している米国の監査法人を通じて,日本企業の利益マネジメントについても影響を与える可能性がある。この場合,わが国の大手監査法人に監査を受ける企業の利益マネジメントが減少する。(2)わが国の大手監査法人はもともと監査の質が高いため,様々な改革の影響はそれまで監査の質が低かった中小監査法人のクライアントに表れるという考え方である。
・分析の結果,SOXの成立後,わが国大手監査法人のクライアント企業の会計的裁量行動が低下していた。これに対し,J-SOX法成立後は大手監査法人,中小監査法人のクライアント企業双方で,実体的裁量行動の低下が観察され,さらに中小監査法人のクライアントの方がその低下の程度が大きかった。前者は前段落の(1)に,後者の(2)と関係すると考えられる。しかしながら会計的裁量行動と実体的裁量行動の代替関係は検出されなかった。
・利益マネジメントの程度の一つの検出方法である,利益ベンチマークの達成を用いた分析にJ-SOXを加味した分析も行った。これは利益マネジメントによるベンチマーク達成に関する代替関係に拡張可能である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

・SOX,J-SOXによる会計的裁量行動と実体的裁量行動の移行に関して監査の質の分析を加えた。また前年度までのデータについて,さらに年度を追加する作業を終了させた。
・2015年度は上記をディスカッション・ペーパーとして完成させた(刊行は2016年4月)。
・前年度の分析についてデータを追加している。
・利益マネジメントの程度の一つの検出方法である,利益ベンチマークの達成を用いた分析も追加して行った。
・以上から上記の評価とした。

今後の研究の推進方策

・会計的裁量行動と実体的裁量行動と代替関係が成立するかどうか,J-SOXに伴う内部統制とは別にコーポレートガバナンスの観点から分析を加えたい。会計的裁量行動と実体的裁量行動の代替関係の分析においては,実体的裁量行動が実施される結果が報告されることが多いが,実体的裁量行動が抑制される状況がないか検討可能である。
・企業が目標利益への到達行動に伴う利益マネジメントに対するJ-SOXの影響については,既にディスカッション・ペーパーにして発行した。次にこの目標利益の達成に,この代替関係が成立するかどうか検討できよう。2 つの裁量行動を組み合わせるとすると,片方が増えれば片方が減るので代替関係が成立する。目標利益としては,ゼロ利益(つまり損失回避),前年度利益(減益回避),予想利益が一般的である。そこに監査の視点を加えれば,より豊富な示唆が得られると考えられる。またこの目標到達の視点は前年度までのJ-SOXに伴う利益マネジメントの変化の分析に取り入れることができる。
・必要なデータが入手できるようであれば,datastream/ORSISデータベース等の国際財務データベースを用いて,同様の分析が可能である。これまで検討した分析を国際的に検討可能になる。
・これらの裁量行動の代替関係が企業の経営行動,例えば投資行動に与える影響も検討できる。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Accrual-Based and Real Earnings Management: An International Comparison for Investor Protection2015

    • 著者名/発表者名
      Masahiro Enomoto, Fumihiko Kimura, and Tomoyasu Yamaguchi
    • 雑誌名

      Journal of Contemporary Accounting and Economics

      巻: 11 ページ: 183-198

    • DOI

      doi:10.1016/j.jcae.2015.07.001

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] The Impact of Japanese Regulatory Changes on Accrual-Based and Real Earnings Management2016

    • 著者名/発表者名
      Masahiro Enomoto and Tomoyasu Yamaguchi
    • 学会等名
      2016 Global Conference on Business and Finance
    • 発表場所
      Honolulu (アメリカ合衆国)
    • 年月日
      2016-01-04 – 2016-01-07
    • 国際学会
  • [図書] 経営者による会計政策と報告利益管理2016

    • 著者名/発表者名
      辻正雄編著(榎本正博分担執筆)
    • 総ページ数
      389(榎本担当:98-108,165-182)
    • 出版者
      國元書房

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公開日: 2017-01-06  

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