M&Aにおいて,DCF法,類似企業比較法(マルチプル法),および市場株価法などを併用した企業価値評価モデルで説明できない部分に関し,人的資本に係る情報が補完的にどの程度有用であるのか明らかにすることを目的としている。具体的には,『公開買付届出書』からデータ収集し,これらの併用方式による評価額に,従業員満足度・従業員定着率・従業員の生産性といった情報の追加をおこない,実際の買付価格との関連を検証する。この結果から,M&Aにおける価値評価はもちろん,非上場企業の株式価値評価や株式買取請求権の行使などにより生じる裁判所における価値評価など,インタンジブルズを考慮した価値評価方法を得ることができると期待している。 企業価値評価に関わる様々な要因について検討を与えるため,研究期間を通じて常にデータの収集・更新を行いたいが、現状では当初通りにはデータセットが揃っていない。特に,『公開買付届出書』や市販データに留まらず,ホームページや株主説明会資料などからも,特に雇用に関連するデータについて出来る限りの収集を行い,予測などに影響を与える新たな情報,知見を得たいと考える。 そのため,これまでもおこなってきているYee(2008)モデルに準じた日本での実証研究を,更新されたデータで再検証する。その結果を踏まえて,人的資本に関する情報を補完的に用いたモデルの発展・拡張を進め,追加的なデータを利用して研究を進ている。
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