本研究は、利益の品質が配当政策のコロボレーション効果に与える影響を実証的に解明することを主たる研究課題としている。初年度の分析によって、配当政策に対する資本市場の評価を分析する際、インプライド期待リターンとインプライド期待成長率の同時逆算手法の適用が有効であることを確認し、2年目は、当該手法を適用することによって得られたインプライド資本コストおよびROEを、価値創造企業と価値破壊企業の間で比較した。最終年度は、配当政策のコロボレーション効果の観点から、日本企業の企業価値に関してこれまで実施してきた実証研究を総括した。 実証結果は、次のようにまとめることができる。日本企業の配当には、将来業績をシグナルする強い力が備わっている。市場は、増益(減益)に裏付けられた増配(減配)シグナルに、より大きなプラス(マイナス)の評価を与えるなど、コロボレーション効果の存在が認められる。日本企業の株主資本コストは平均的に7%前後であるが、価値創造企業たり得るには、10%以上のROEを長期持続的に達成する必要がある。株主構成についても、企業価値最大化の観点から、安易な個人株主・安定株主に逃避するのではなく、洗練された外国人投資家との対話を積極的に行うべきである。 以上の証拠は、日本企業が、企業価値最大化の観点から、コロボレーション効果が備わっている配当政策を通じて、投資家と積極的にコミュニケーションすべきことを示している。
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