本研究では、会計利益と課税所得の一致(BTC)の程度が経営者報酬および契約の効率性にどのような影響を与えるかを理論的に検証した。BTCの程度については、各国さまざまな制度をとっているが、それが望ましいかどうかについて近年論争になっている。分析の結果、BTCを強めると経営者の利益マネジメントを抑制することができるが、同時にタックス・プランニング活動を阻害してしまうというトレードオフが存在する。さらに、契約の効率性の観点からは、会計利益と課税所得は一致させない方が望ましいということがわかった。本研究成果は、各国の法人税制度を考える上で、一つの重要な示唆を与えている。
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