本研究の目的は,製造業を中心として構築されてきた日本企業のマネジメント・コントロール・システムを,知識集約型組織の特徴を踏まえて再考し,日本企業が知識集約型組織においてもグローバルに強みを発揮できるような新たな仕組みを提言することにあった。 これを踏まえ1年目には,先行研究のほか,知識集約型組織を国の政策として力を入れてきたフィンランド企業の日本法人に対するパイロットインタビューなどを行った。 2年目には,フィンランド企業に対する調査結果をフォローし,論文としてまとめた。調査は,在フィンランド日本企業およびフィンランド企業に対するインタビュー調査で,2013から2014年に行われたものである。調査結果の整理,分析を行うとともに,その後の状況変化についての確認のために,フィンランドの研究者に対するヒヤリングを行った。加えて,知識集約型組織として出版社の編集業務に着目し,複数の出版社における実態についてインタビュー調査により把握した。また,知識集約型組織が多いと予測された中小企業に対する質問紙調査を試みた。 3年目には,これまでに行った調査を業績として論文にまとめたほか,編集業務の事例をケースとしてまとめている。 結果として,知識集約型組織においては,階層を前提としたマネジメント・コントロールではなく,階層を意識しないマネジメントが必要になることがわかる。そこには,主体の自律的な行動に加え,その行動に対するマネジメントからの信頼の高さが条件となる。
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