研究実績の概要 |
第三年度は、IASBより公表された新リース会計基準のもとでのリースの資本化処理の理論的検討を行うとともに、新リース会計基準がわが国に導入された場合に生じる影響を推計した。 わが国ではファイナンス・リース取引は資本化処理され、オペレーティング・リース取引のうち解約不能のものに係る未経過リース料は、貸借対照表日後1年以内のリース期間に係るものと、1年を超えるリース期間に係るものとに区分して注記される。新リース会計基準では、リース期間が1年以内のリース取引とリース物件の価値が低いリース取引を除き、原則としてオペレーティング・リースを含むすべてのリース取引を借り手の側で資本化処理することが規定されている。つまり、新リース会計基準をわが国企業が適用した場合には、脚注で開示されてきたオペレーティング・リース取引が、すべて貸借対照表に資産および負債として計上されることになる。 そこで、まず、ファイナンス・リース取引の貸借対照表への計上金額とオペレーティング・リース取引の注記開示金額を調査した。調査は全体的な取引規模を把握するために、マクロベースでの金額を把握することとし、調査対象は東京証券取引所市場第1部および市場第2部に、2015年4月から2016年3月までの間に上場していた企業のうち、日本基準を適用する企業の連結財務諸表とした。その結果、新リース会計基準が適用されると貸借対照表に現在計上されている金額のおよそ4倍程度のリース資産およびリース負債の金額が追加計上されることが判明した。 次に、オペレーティング・リース取引に係る未経過リース料を開示する企業について、データを業種別に細分化して未経過リース料の業種別の開示金額、開示企業数および1社あたりの単純平均額を集計した。その結果、全体の平均金額が15,705百万円で、これを超える金額を開示する業種が6業種あることが判明した。
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