研究実績の概要 |
本研究は,環境経営における経営者の意思決定をコントロールするために有効な会計報告制度の設計へ展開する基盤を確立することを意図して,経営者の環境会計報告における決定プロセスをモデル化し,環境会計システムが及ぼす影響を分析することを目的とする。本年度は,(1) 平成26~28年度の研究成果の公表に取り組むととともに,(2) 過年度のモデルを拡張し,市場における投資者の取引決定を導入したモデル分析を実施した。その結果として,国際査読誌投稿3件(うち1件受理,2件は査読中)と,ワーキングペーパー発行1件,および国際学会における論文報告1件,国内学会における論文報告1件を実施した。
上記(1)に関しては,過年度におけるモデル分析の結果を2編の論文に取りまとめ,国際誌に投稿した。第1は,環境会計報告における監査に着眼し,その監査人の質が環境会計報告において内生的に経営者によって決定されるモデルを分析した研究(平成27年度)成果であり,論題” Auditor choice as a commitment device”として国際査読誌に受理済みである。第2は,会計報告規制機関の会計規制を内生化したモデルにもとづいて環境会計報告における経営者の裁量行動を解析した研究成果(平成28年度)であり,現在査読コメントに対応改訂中である。
上記(2)は,環境会計情報を利用する能力をもつ一部の投資者が私的情報として投資決定に用いるモデルを提示して,市場における取引量と株価が環境会計報告に依存してどのように決定されるかを分析した。本研究成果は,国際学会(European Accounting Association)にて論題”CSR Disclosure, Market Trading Volume, and Price Response”として報告するとともに,国内学会(日本会計研究学会)においても論題「CSR情報開示の価格形成への影響」として報告を実施した。なお当該論文は,ワーキングペーパーとして発行した後,現在,国際査読誌に投稿中である。
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