今日,IFRSやSFAS,そして日本の会計基準によって計算される利益は,かつての実現利益(稼得利益)ではなく,資産と負債の公正価値評価を部分的に取り入れた市場連動型の稼得利益といえる。これは2007年頃まで国際会計基準審議会が中心となって追及していた全面公正価値会計(純資産によって企業価値を表示するモデル)の残滓ともいえるが,資産や負債の売買を予定していない製造業にとって,公正価値の変動を損益として認識することは本業の収益力を表す稼得利益計算にノイズを持ち込むことになり,フローアプローチによる企業価値計算を害する。その解決手段は「その他の包括利益」の区分にある。
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