研究実績の概要 |
本研究課題の最終年度にあたる平成28年度では、まず、これまでの包括的な文献調査を基礎として、組織間での原価管理の実施と統治構造の設計との関連性にかかわる質問票と送付先リストを作成し、質問票調査を実施した。また、関連する質問票データを用いて統計的に分析し、組織間での契約の諸側面(範囲の広さ、詳細さ、協働志向など)の関連性だけでなく、これら組織間での契約の諸側面と原価管理活動の実施との関連性に関わる仮説について経験的に検証した。さらに、これまでの研究活動から生じた研究成果を国内だけでなく海外の学会において報告した。 これらの研究成果は、次の点で有益であると考えられる。一つは、組織間での公式の統治構造と原価管理活動との関連性を実証的に検討した点である。組織間での統治構造と原価管理活動の実施との関連性について、欧米の先行研究では、組織間関係の「構築」の側面と、組織間関係の管理の「実施」の側面というように、それぞれ区分して検討する傾向が強かった(Anderson and Dekker, 2009)。こうした両側面の関連性に注目し、データを用いて実証的に接近した点において、本研究の価値は高いと考えられる。もう一つは、組織間での契約の諸側面の関連性など、公式の契約に大きく注目した点である。これまでの日本の先行研究では、組織間原価管理に注目する傾向が強く、公式の契約について検討したものは限定されていた(坂口・河合・上總, 2015)。こうしたわが国の研究の限界を克服し新たな視座を提供した点でも、本研究の貢献は大きいといえる。
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