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2014 年度 実施状況報告書

経営者報酬契約のデザインにおける会計情報の役割について

研究課題

研究課題/領域番号 26380634
研究機関関西大学

研究代表者

乙政 正太  関西大学, 商学部, 教授 (60258077)

研究分担者 岩崎 拓也  関西大学, 商学部, 准教授 (30611363)
椎葉 淳  大阪大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (60330164)
首藤 昭信  神戸大学, 経済経営研究所, 准教授 (60349181)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード経営者報酬 / 経営者予想 / 利益ベンチマーク
研究実績の概要

これまでに経営者報酬の決定要因として会計情報,特に会計利益が重要な役割を果たしていることは実証的に明らかにされつつある。本研究の目的は,これまでの研究成果を基礎にして,経営者報酬契約のデザインにおける会計情報の役割をより深く検討することである。われわれは,特に,日本の財務報告制度として定着している決算短信に含まれる経営者予想が利益のベンチマークとしてどのような役割を果たしているかを実証的に研究している。
決算短信に含まれる経営者の予想情報の開示は日本では証券取引所の要請によりほとんどの企業が開示を行っている。これはアメリカなどの海外の自発的な財務報告制度と比べればかなりユニークである。
経営者の予想利益が経営者報酬制度に用いられているという逸話的証拠は存在する。たとえば,日本では適時開示情報として,業績下方修正の発表と役員報酬の減額は同時に公表されることがあり,このことは当初予想利益が経営者報酬を決める重要なベンチマークとして機能していることを示唆している。また,アンケート調査によっても,「報告利益の目標値」として,自社が公表した予想値がもっとも重視されていることが報告されている。さらに,予想利益の業績連動報酬の一部に組み込んでいる上場企業がすでに存在することも突き止めている。このような事例やアンケート調査から,日本企業においては,経営者予想利益が報酬契約において一定の役割を果たしている可能性がある。しかし,経営者予想利益の報酬契約における役割は,資本市場における役割と比較すると,ほとんど研究がなされていない。
報酬契約が経営者から大きな努力を引き出すためにデザインされている限り,実績利益が利益予想を超過することは経営者報酬の増加につながるであろう。そこで,経営者報酬契約において,当期の実現利益と比較される経営者予想は利益ベンチマークとして利用できると仮説化される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

経営者報酬,財務データ,ならびに株価データに関するデータベースを整えながら,分析に必要となるデータを抽出し,そのデータから実証分析に必要となる変数を選出した。そして,統計的検証を行い,今年度の研究期間に,“The Sensitivity of Directors’ Cash Compensation to the Performance Measures of Forecast-based Benchmark”というワーキングペーパーを仕上げた。
本研究計画では海外ジャーナルへの掲載を目指すことにしているが,仮説設定の展開の仕方やリサーチモデルの緻密化においてなお改善する余地があるため,できるだけ国内外の学会やレファレンスに参加し,論文のブラッシュアップを図りたい。特に,経営者予想が損失計上や減益などのベンチマークとしてどの程度有効であるかを追究しなければならない。得られたコメントを参考にしながら,今後は論文の提出先などを決定していきたい。

今後の研究の推進方策

今年度についても,経営者報酬契約のデザインにおける会計情報の役割を探っていきたい。調査すべき点は,経営者報酬に利用される業績指標として,当期の実績利益から予想利益を差し引いた予想誤差だけではなく,予想利益から前期の実績利益を差し引いた予想イノベーションについても検討することである。経営者報酬とこれらの業績尺度の関連性に焦点を合わせることができるのは,日本の上場企業のほとんどすべてが毎年次会計期間末すぐに,次期の利益に関する経営者予想を公表するからである。この財務報告制度は本来自発的であり,アメリカのシステムと同じように見えるが,経営者の利益予想の発表は日本ではほぼ強制的であり,ほとんどの日本企業は実績数値と共に業績予想を連続的に公表している。
予想イノベーションは,1期先の利益の増減を示す。経営者も利害関係者も不確実性で将来の利益実現の予測可能性を探るが,日本企業の経営者は積極的な予想イノベーションを報告する傾向があることが報告されている。事後的清算問題を生むかもしれないので,このような将来情報が報酬決定に直接に組み込まれているとは考えられないが,少なくとも前期の実現利益よりも高い目標を設定するという企業内の予算設定のあり方と整合的である。予想イノベーションが正だったときに,経営者予想誤差が正となるケースにおいては,他のケースと比較して,経営者報酬をより大きくする (感応度が高くなる) 可能性はあるだろう。この点は実証的課題として残されたものである。
また,従来の実証研究は,経営者がある種の利益ベンチマークを乗り越えるインセンティブをもつことを示す。最も頻繁に研究されてきた利益ベンチマークは,ゼロ利益,前期利益,アナリストの予想利益である。これらのベンチマークに比べて,経営者予想がどの程度優位な指標として位置づけられるかも仮説に加えていく作業が必要であろう。

次年度使用額が生じた理由

すでに消化済みであるが,未決済のものが含まれている。また,他大学への移籍が決まった者は,今年度の研究準備のために繰り越している。

次年度使用額の使用計画

未決済のものは即座に適切な処理を行う。また,他大学への移籍が決まった者は,研究基盤を作るためにパソコン等を購入する予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2014

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] 経営者報酬と利益ベンチマークの未達の関係2014

    • 著者名/発表者名
      乙政正太・首藤昭信・椎葉 淳・岩崎拓也
    • 雑誌名

      国民経済雑誌

      巻: 209 ページ: 61-74

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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