最終年度である当該年度は、企業の社会的評価と企業の持続可能性報告との関連についての理論的および定量的研究の改善を行うとともに、国内・海外学会における発表を行い、成果を論文として発表することであった。 そこで、前年度に発表した内容をもとに、新制度派組織論における同型化の仮説を援用して,理論的な内容を改善するととともに定量的な分析の精緻化を行った。 理論的研究については、日本管理会計学会および日本社会関連会計学会において、報告を行った。日本管理会計学会では,管理会計領域において持続可能性報告が関心を集めている点を指摘するとともに、持続可能性報告の同型化が進む可能性について理論的に分析を行った。日本社会関連会計学会では、統合報告における複数の資本概念に関して、組織フィールド概念を援用しながら経済資本への転換可能性を指摘した。さらに、新制度派組織論と管理会計におけるマネジメントコントロール概念との関連について紀要論文を作成した。 定量的研究については、海外学会であるアジア太平洋学際会計研究学会(APIRA)において、学会報告論文を伴う報告を行った。そこでは、正統性理論にもとづき環境負荷業種において正統化を指向した持続可能性報告が促進されるとともに、新制度派組織論の観点からCSRレピュテーションの獲得を巡って企業が競争するような組織フィールドを仮定することによって、CSRレピュテーションの高い企業がより正統化を指向して持続可能性報告を行うという仮説を設定した。これらの仮説はいずれも支持されており、正統性理論を新制度派組織論の観点から理論的に拡張することが可能であることを指摘した。
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