本研究の目的は、これまでの付加価値管理会計研究を基礎としつつ、平成25年度まで科学研究費を受給し実施してきたハイアールと京セラの比較研究の成果を踏まえて人本主義という新たな構想の下で発展させることであった。最終年度である平成29年度では、前年度の研究において取り組んできた人本主義と日本的経営に関する先行研究の歴史的・文献的な整理と共に、大企業だけではなく、中小企業において「人を大切にする経営」すなわち人本主義経営をめざしている企業の研究に重点をおいて研究してきた。そのため平成29年度においては中小企業に関する先行研究、各種資料をフォローし、いくつかのインタビュー調査も実施してきた。 これらの研究成果の一部については、後掲の論文「人本主義に基づく中小企業の管理会計」と題して公表し、中小企業会計学会全国大会でも発表してきた(9月7日)。またそれに先だって専修大学商学部では学生向けに講演をし(6月14日)、会計学サマーセミナーin 九州では研究発表をしてきた(8月9日)。さらに 第22回日中社会経済国際シンポジウムでも「人本主義に基づく経営と会計-人本主義管理会計の可能性-」と題して研究報告し、中国の研究者とも交流してきた。また中国現地には安徽省と湖南省をそれぞれ訪問し、安徽省では定点観測としてハイアールの合肥工場を再訪する(6月2日)と共に合肥工業大学において「以人為本経営与中小企業」のテーマで講演を行った(6月1日)。湖南省では日系の湖南平和堂を訪問し(10月26日)、湖南大学と湘潭大学において「日本的非営利組織現状与対策研究」(10月26日と27日)のテーマで講演した。中国でも中小企業の活性化はきわめて大きな課題となっており、また日本の人本主義経営やNPOについての関心も高かった。NPOにおいても人本主義的な人間本位の経営と付加価値指標に基づく管理会計は重要なのである。
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