研究課題/領域番号 |
26380638
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研究機関 | 四天王寺大学 |
研究代表者 |
原田 保秀 四天王寺大学, 経営学部, 教授 (20331720)
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研究分担者 |
矢部 孝太郎 大阪商業大学, 総合経営学部, 准教授 (20411465)
松脇 昌美 四天王寺大学, 経営学部, 准教授 (30367875)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 会計倫理 / 会計教育 / アクティブ・ラーニング / 会計不正 / 応用倫理 / 会計監査 / アメリカ・カナダ |
研究実績の概要 |
日本簿記学会第30回全国大会自由論題報告において、原田保秀、矢部孝太郎の両名で、「簿記会計教育と会計倫理教育-アメリカ簿記会計テキストの実態調査-」というタイトルで報告を行った。この報告は、本研究の課題であるアメリカ・カナダにおける会計倫理教育の実態把握という課題に応えるものである。具体的な内容としては、アメリカにおける会計倫理教育の現状を、会計学テキストによるサーベイ調査で明らかにした。調査によって多くのテキストの中に、倫理に関する記述があることが確認でき、わが国のテキストとの違いが鮮明になった。アメリカでは会計入門レベルから会計倫理を意識した講義が展開されていることが明らかになり、わが国における会計倫理教育の導入の必要性が確認できた意義は大きい。 松脇昌美により、カナダにおける会計教育の現状についても調査した。会計初学者の段階的な会計知識の修得と、会計知識を活かした将来のキャリア教育を支援する体制が、整っており、その点はわが国の会計教育よりも先進的であることが確認できた。今後は、そのなかで会計倫理がどのように取り扱われているか更なる調査を進める予定である。 日本会計研究学会第64回関西部会統一論題報告において、原田保秀が「企業統治と会計倫理の視点-監査人の選任・解任と報酬の決定権を例にして-」というタイトルで報告、討論を行った。今般のコーポレート・ガバナンスに関する会社法改正が、企業のガバナンスにどのような影響を与えるのか、特に監査人の選任・解任と報酬の決定権の問題を倫理学的な観点から分析した。この研究は、本研究の課題である会計倫理の必要性を明らかにする経済学モデルの構築の基礎部分に位置する。また、会社法の改正は、本研究の課題である日本企業における企業倫理の内部制度化の実態把握を調査するうえで、大きな影響を与える要因ということもあり、この課題の基礎固めという意味がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
会計倫理の必要性を明らかにする経済学的モデルを構築するという課題と日本企業における企業倫理の内部制度化の実態把握については、その基礎部分を固める一定の研究成果をあげることができた。 アメリカ・カナダにおける会計倫理教育の実態把握という課題については、テキストの資料・文献の収集が予定していた以上に早く進み、サーベイ調査を実施することができた。結果として、アメリカ・カナダにおける会計倫理教育の実態把握の研究を、他の課題に優先して実施することとなった。一定の成果を、学会報告という形で示すことができた。 カナダの会計教育の現状についても理解できたので、会計倫理がその中でどのように取り扱われているかは今後の検討課題である。 ICT等を利用した会計倫理教育手法の開発と効果の測定については、オーディエンス・レスポンス・システムの機器を購入し、それを利用して、何回かの会計倫理教育を実践することができた。ただし、まだ十分に機器の利用に慣れていないこと、クリッカーの台数不足などの問題がある。これらの点を解消して、実践を積み重ね、データを蓄積したうえで、一定の成果として、次年度には何らかの形で研究成果をアウトプットする予定である。 以上のように、研究課題の進捗度は、研究進行計画に予定していたものとは若干順番が異なる部分もあるが、おおむね順調に推移しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
まず、会計倫理の必要性を明らかにする経済学的モデルの構築という課題については、ベースとなるモデルについて、これまでの研究成果も踏まえて精緻化を進めたいと考えている。 第2に、アメリカ・カナダにおける会計倫理教育の実態把握の研究については、会計学入門レベルの会計倫理教育の実態把握ができたので、次年度からは、更なる調査を進め、専門科目としての会計倫理の実態把握に努めたいと考えている。 第3に、日本企業における企業倫理の内部制度化の実態把握については、先行研究の確認やアンケート項目の作成等、実施に向けて作業を進めたいと考えている。 第4に、ICT等を利用した会計倫理教育手法の開発と効果の測定については、講義内でオーディエンス・レスポンス・システムを用いたピア・インストラクションの技法を使って、会計倫理教育を実践し、技法の改良・修正を加えて、教育の効果を測定していきたいと考えている。 なお、これまでの研究報告の成果は、論文執筆を行い、学会誌等への投稿を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
会計倫理のアクティブラーニングの事例に関して報告する研究会に出張する予定であったが、その研究会の日程が諸般の事情により延期されることになり、結果として予定していた出張旅費が使われなかったことが、次年度に使用額が生じた主たる理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、延期された研究会での出張を含めて、当初計画していたとおり予算を執行する予定である。なお、オーデォエンス・レスポンス・システムのクリッカーについては、大人数への使用を考えており、追加購入するか検討中である。また、アンケートの実施については、優先して取り組む可能性があり、その場合、当初計画の予算の使用計画が若干変更される可能性がある。
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