研究課題/領域番号 |
26380641
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
若林 公美 甲南大学, 経営学部, 教授 (20326995)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 比較可能性 / 財務情報 |
研究実績の概要 |
本年度前半では、財務情報の比較可能性に関する先行研究について文献収集を行い、比較可能性の測定尺度を模索した。先行研究を概観したところ、財務情報の比較可能性の測定に際しては、会計利益情報と経済事象の代理変数としてリターン情報に基づき、財務情報の比較可能性を尺度化するDe Franco et al. (2011)のモデルが頻繁に用いられていることを確認した。 本年度後半は、前半の文献収集作業から得られた知見に基づき、比較可能性の分析に必要なデータベースの整備を中心に行った。具体的には、日経メディアマーケティング社の「日経NEEDS 企業財務データDVD版」と「日経Financial Quest」から分析に必要な財務データを入手した。 まず、比較可能性の測定にあたって、会計利益データのみから可能な尺度に着目し、その時系列特性について調査した。具体的には利益のシンクロニシティに着目し、時系列データによる動向を観察した。分析の結果、年度によって例外はあるものの、全般的に利益のシンクロニシティは過去20年にわたって、上昇傾向にあることがわかった。この成果については、11月に韓国国際会計学会にて報告を行った。 次に、11月の学会参加者との議論を通じて、その他の指標や上昇傾向が発見された理由について検討するため、財務データに加えて、リターン・データも活用した分析を行うべく、金融データソリューションズ社の「日本上場株式リターン・データ」からリターン・データを入手した。これらのデータを結合すべくExcel MacroやSTATAなどのソフトウェアを活用し、分析に必要なデータについて、約8割の整備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度前半の計画として、予定していた先行研究の概観を行い、財務情報の比較可能性の尺度を検討した。また、後半の計画に従って、分析に必要な会計情報と財務情報のデータを入手し、その整備を8割程度終わらせた。会計利益情報に基づく分析結果も、韓国国際会計学会で報告し、ディスカッサントをはじめとする学会参加者との議論を通じて、分析に必要な改善点も洗い出すことができた。そのため、本研究は当初の予定通り、おおむね順調に進展しているといえよう。 課題としては、先行研究を検討した結果を論文にまとめて公表することが遅れていることと、2割のデータ整備を次年度に持ち越したことがある。次年度以降に、これらの点は改善する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、研究実施計画に基づき、財務情報の比較可能性が資本市場にもたらす効果を調査するうえで、有用な文献を精読する予定である。また、ヨーロッパ会計学会やアメリカ会計学会での報告を通じて、学会参加者との意見交換により、比較可能性の時系列分析に必要な追加分析を検討する。これらの結果を受けて、さらに、必要な追加データの整備を行い、分析の精緻化に努める予定である。
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