「目で見る」調査の質問・選択肢レイアウトが回答傾向に影響を及ぼすことを有権者対象による郵送調査にて実証し、郵送とインターネットによる「目で見る」複合調査のための知見を得た。 ①調査票の体裁が回収率に影響を及ぼす。表形式や選択肢2段配置などにより空白部分が目立つもののほうが回収率が高くなる。見た目の負担感が軽減されるからだという仮説が立てられる。②5選択肢横配置に「その他」を付加すると回答傾向に有意差あり。5ポイントスケール(3番目に中間選択肢)で左から右に選択肢を横配置した場合、6番目に「その他」を配置すると4番目の比率が下がり5番目の比率が上がる。意味上の中間点(3番目の選択肢)ではなく視覚上の中間点(3番目の4番目の間)を基準とした回答構成にシフトする傾向がある。③表形式のほうがマルが付けやすい代わりに回答の偏り(特定の番号が選ばれやすいなど)が発生するという仮説を検証しているが、まだその兆候は発見されていない。④選択肢の縦配置正順と逆順で回答傾向に有意差あり。初頭効果が明確に確認された。複数回答質問や多選択肢表示質問だけではなく択一質問や10選択肢程度であっても初頭効果が発生する。⑤選択肢の横配置と縦配置とでは回答内容に差異がないようである。⑥選択肢の2段配置は回答傾向に有意差あり。2段配置にすれば初頭効果が弱まる。長文選択肢など目立つ選択肢の比率が下がる。⑦選択肢縦配置で中間選択肢「どちらでもない」が中心にあれば比率は増大。中間選択肢を5ポイントスケールの真ん中に置くと5番目に置くよりも倍以上の比率になる。⑧「10選択から3つまで回答」で3つの回答枠への順位指定回答では回答枠無しのマル付けより回答数が3に近い。⑨分岐質問への矢印で誘導、質問番号で誘導などにより影響が多少みられる。 人口減少問題についてさいたま市を対象に実施した調査結果は、討論会や報道、論文で公表された。
|