研究課題/領域番号 |
26380646
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
小林 恵美子 金沢大学, 外国語教育研究センター, 教授 (60319241)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 社会的絆理論 / いじめ |
研究実績の概要 |
平成26年度は、Travis Hirschiの社会的絆理論が措定する原因機制が、日本人高校生によるいじめに対して及ぼす抑止効果を実証解明した。 実証に際しては、まずはじめに、以下4つの要素から成る「社会との絆」がいじめ行為を抑制する、という仮説を設定した:(a) 愛着、(b) コミットメント、(c) 巻き込み、(d) 規範観念。第2に、2011年5月に大学1年生を対象に実施した回顧型Webアンケート調査のデータを使って、上記4つの要素を定義に則って適切に操作、尺度化した。愛着を構成する3つの側面(親への愛着、仲間への愛着、学校への愛着)、そして、親への愛着を構成する3つの下位要素(愛着を伴う同一化、コミュニケーションの親密さ、監督状況)についても、定義に則って適切に操作、尺度化した。第3に、上記仮説が正しいかどうかを検証した。検証においては、理論の主要概念、すなわち、社会との絆の構成要素が及ぼす抑止効果を評価するため、相関分析と重回帰分析を併用した。重回帰分析においては、いじめ行為との関連が指摘される、調査対象者の性別、年令、家庭環境、親の学歴などを統制変数として加えた。分析の結果、米国での調査結果と同様に、限定的ではあるが、社会的絆理論のいじめ行為に対する分析的妥当性が確認された。これはつまり、米国で開発された社会的絆理論が、日本人高校生のいじめ行為の原因論として一定程度有効であることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
社会的学習理論の主要概念である「非行的な仲間との接触」には数多くの要素があり、いじめに対する「正の強化」や「負の強化」などの変数操作に時間を要しているので、遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、社会的学習理論、緊張理論、セルフコントロール理論が措定する原因機制がいじめに対して及ぼす効果を実証解明していく。その際には、先行研究を鑑み、有識者に助言を求めながら、理論に則した促進要因と抑止要因の選定を行い、定義に則った適切な変数操作を迅速に進めることで、研究計画を遅延させることなく遂行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗状況を鑑み、成果発表するには時期尚早と判断したため、日本教育社会学会への参加を見送った。
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次年度使用額の使用計画 |
国内外の学会で成果報告することで、来年度に使用する。
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