平成28年度は、以下4つの逸脱理論が措定する4つの異なる原因機制のうち、日本人高校生によるいじめ発生メカニズムとして、どの理論が一番妥当であるのかを検証した:①Travis Hirschiの社会的絆理論、②Ronald Akersの社会的学習理論、③Robert Agnewの緊張理論、④Michael Gottfredson & Travis Hirschiのセルフ・コントロール理論。検証に際しては、日本人は概して個が弱く、人間関係を重視するため、社会的環境要因の影響を強く受けやすいことを記した日米比較文化に関する文献を参考にした。これら文献を基に、個人には内在しない外的要因を逸脱行為の主因と見なす、以下2つの理論が措定する原因規制の妥当性の方が高いという仮説を立てた:①社会的絆理論、②社会的学習理論。大学新1年生入対象の回顧型Webアンケート調査のデータを使用して理論に即した変数を作成し、重回帰分析を用いて検証した結果、上記仮説を実証する結果が得られた。具体的には、社会的絆理論の措定から導かれる親への愛着や規範観念など、社会との絆がいじめを抑制するという分析枠組み、そして、社会的学習理論の措定から導かれる逸脱行為に対する正の強化や負の強化など、非行的な仲間との接触がいじめを促進するという分析枠組の実証的妥当性が高いことが確認された。特に、社会的学習理論の主要な促進要因である、非行的な仲間との付き合いが有効に作用していることが示された。
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