今年度は,以下の2点に関して,最終的な成果をまとめるための作業を進めた. (1) 教育の経済的効用に関するコーホート比較モデルの修正・・・教育の経済的効用に関して,「社会階層と社会移動」全国調査の各時点の男性データをプールして,コーホート別の所得関数を求め、それをもとに高等教育の所得に及ぼす効果を比較している.本年度はこのモデルに関して,所得移動の専門家のアドバイスを受け,モデルの最終的な修正を行い,分析を行った. (2) 教育機会の経済的不平等に関する趨勢分析・・・これまで行った教育機会の経済的不平等に関する趨勢分析は,SSM調査データのみを用いたものであったが,類似した方法で実施されている日本版総合的社会調査(JGSS)データを追加することで趨勢をより詳細に把握することにした.この趨勢分析では日本での教育達成の中心的な位置を占める学校教育費用と学力に注目したモデルを用いている.まず中学校3年生時点の学業成績(自己評価)に関する質問を含んでいるJGSSが複数年度みられたので,SSM調査とJGSSを結合して10000サンプル以上を確保した.このデータを用いて,父所得と学業成績を用いた出生年コーホート(1年単位)ごとの教育達成の規定要因分析を1946年生まれ以降40年間にわたって行った。さらにこの規定要因の変動とマクロな変数との関連を用いて、教育機会の経済的な不平等が生じる社会的な条件を検討した. 論文執筆は完了していないが,基本的な傾向は明らかになっており,今年度の学会報告を経て論文として発表する予定である.
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