「国際移民による国民国家への挑戦」の観点から移民・外国人に関する市民権制度の変容と社会統合との関係を考察していった。比較的包摂的だとされる多文化市民権を採用していった社会では、一定程度の社会統合が実現していると考えられる。しかし近年、ムスリム移民の増加・問題化や移民・難民の急増などから多文化市民権の再考が急速に進んでいる。このような多文化市民権をめぐる経験に鑑みて、日本のようなエスノナショナルな市民権を残存させている社会も多文化市民権の少なくとも部分的な導入が求められていく。しかし、同時に多文化市民権の修正をも求められるであろう。
|