研究課題/領域番号 |
26380665
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
梁 仁實 岩手大学, 人文社会科学部, 准教授 (20464589)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 在日コミュニティ / 文化政策 / 東京オリンピック / 日韓 |
研究実績の概要 |
研究1年目の今年度(2014年度)は韓国の文化政策・事例研究などの関連資料を収集し、とりわけ1964年の東京オリンピックを前後にした時期に焦点を当て、越境する「文化」テクストのプル(在日コリアン側の受容)とプッシュ(韓国政府の要求)要因についての考察を行った。文化政策以外にも日韓及び在日コリアンとの関係を研究してきた多くの先行研究では1965年の「日韓基本条約」を主なキーワードとして取り扱うが、本研究では『日韓基本条約』と共に東京オリンピックを一つの重要な[イベント]として考えた。本研究ではこのために日韓両国の当時のメディア及び在日側のエスニックメディアを主な資料とし、研究を進めた。 興味深いことは1964年のスポーツイベントであった東京オリンピックをめぐって日韓両国と在日コミュニティがそれぞれ異なる思惑を持って関連映像を制作していたことである。たとえば、日本は東京オリンピックというスポーツイベントを通して、戦後の廃墟から立ち直り経済成長を成し遂げた自分たちの姿を海外に示す必要があるとし、『東京オリンピック』海外版を制作した。韓国は東京オリンピックをきっかけに、既存のオリンピックで活躍していた韓国選手たちの姿を集めて編集したオリンピック映像の韓国版を作り出した。そして、在日コミュニティは東京オリンピックに出場した韓国選手たちの「活躍」を通して韓国の「政治イデオロギー的優位が立証」され、多くの在日コリアンがその籍を「朝鮮から韓国に変える」きっかけとなったのである。 そして、東京オリンピック以降多くの在日コリアンの映画人たちが日韓の国境を越えながら活躍して行くことになったことも本研究で明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究1年目の今年度は研究実施計画に沿って概ね研究の目的を達成することが出来た。ただし、研究実施計画にあった「九州大学 梁三泳コレクション」に対する調査は九州大学の都合<まだ資料の整理が不十分であること>から閲覧及び資料調査が出来なかった。梁三泳は1960年代韓国の文化テクストを積極的に受け入れていた在日コミュニティの中心人物であるが、その考え方や彼をめぐるコンテクストを調べることができなかったため『当初の計画以上発展している』のではなく、おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年目になる2015年度は研究1年目で行っていた資料収集及び文献調査を行い、さらに在日コリアンコミュニティが出していたエスニック・メディアの収集に目を配る積りである。また、1960年代以降の韓国の文化テクストの越境とコリアン・ディアスポラの役割に関連する調査をさらに進めていき、その傍ら、7月(ドイツ)、8月(オーストリア)において研究発表を行う予定である。
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