研究課題/領域番号 |
26380667
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
稲葉 奈々子 上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (40302335)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 社会運動 / ホームレス / 非正規滞在移民 / 反貧困 / フレーム分析 / 公営住宅 / スクオッター / 都市下層 |
研究実績の概要 |
社会的排除の対象とされるホームレスや非正規滞在移民が、社会的権利へのアクセスを正統化するプロセスを、フランスではパリにおける住宅への権利運動の担い手に対するインタビュー調査と資料収集、日本では東京を中心とした公園や河川敷に居住する野宿者の支援運動の担い手に対するインタビュー調査を行った。 貧困層の社会的権利のアクセスに対して社会的な批判が起きやすい日本の例は、社会的権利が構築されるプロセスがフランスとは異なることが明らかになった。フランスの場合は、貧困層だけを対象とした社会的権利としてフレーミングされていないが、日本の場合は貧困層を対象にした制度設計となっている。普遍的な権利としての訴えのほうが、社会的な批判は受けにくいが、貧困層に対するアファマティブ・アクションの考え方は受け入れられにくいといえる。 またフランスの場合は運動のレパートリーは空き家占拠のようにラディカルなものが多いが、「すべての人に住宅への権利を」というようなフレームの普遍性ゆえに、保守系の政治勢力にも受け入れられている。いっぽうの日本は、同じく公園や河川敷の占拠というラディカルなレパートリーに加えて、「野宿をする権利」「仕事をしない」という、近代産業社会の価値を覆すフレームを掲げており、保守系の政治に受け入れられないばかりか、左派の政治勢力の合意も得にくい。日本、フランスともに政権は「法の前の平等」の原則ゆえにアファマティブ・アクションを否定する点で同じだが、社会運動のフレームとレパートリーには相違がみられる。この相違は社会的権利が、フランスにおいては普遍的権利として一度は確立しており、それが崩されることへの抵抗であり、日本の場合は、いまだ確立していない社会的権利を獲得していく途上にあるというプロセスの相違に基づいていると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね予定どおりのインタビューの件数をこなしたが、フランスにおける2007年の請求権つき住宅への権利にかかわった議員へのインタビューが、フランス滞在期間中に先方との日程調整がうまくいかず、実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
さらにインタビューの件数を確保するために、これまでより多くの紹介者にインフォーマントを紹介してもらえるようにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内では予定していたよりも近隣でのインタビューが多くなり交通費が予定よりも少なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度に遠方で行うはずだったインタビューを28年度に繰り延ばしたため、その交通費として充当する。
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