研究課題/領域番号 |
26380670
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
ウー ジョンウォン 埼玉大学, 人文社会科学研究科(系), 教授 (50312913)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 従業員ランク / アジア / 組織内階層 / 報酬システム / 昇進パターン / 効率と公正 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本・中国・インドネシア・韓国・マレイシア・タイ・ベトナムを対象として、アジアにおける、(ア)従業員ランク付けの仕組みと、(イ)ランク間移動のパターンを比較研究しようとするものである。平成27年度は、この骨格にしたがって、(ア)がすでに調査されている国については(イ)を、(ア)が十分調査されていない国についてはそれと合わせて(イ)を調査した。 (ア)に関する主な調査項目は、簡略化すれば、次のとおりである。(A)ランク付けの基本骨格。(B)ランク付けの要件。(C)ランク付けの選抜方法。 (イ)に関する主な調査項目は、次のとおりである。(A)従業員の典型的な移動経路。まずは、男性と女性にわけて、それぞれの平均的な従業員がランク間をどのように移動するかを聞いた。これは、代表的な属性の「性」が移動パターンにどのように影響するかをみるためである。次に、高卒と大卒にわけて、それぞれがどのように移動するかを聞いた。これは、能力の代表指標の「学歴」が移動パターンにどのように影響するかをみるためである。(B)重要なランクにおける内部昇進比率。これは、ランク間移動が基本的にどの程度内部化されているかをみるためである。まずは、現場監督者(組長クラス)のうちどの程度が内部昇進によるものかを聞いた。次に、中間管理者(課長クラス)のうちどの程度が内部昇進によるものかを聞いた。これら二つを選んだのは、ブルーカラーとホワイトカラーのそれぞれのパターンと両者間の関係をみるためである。(C)マイノリティのランク付けの程度。出身・性・国籍などによるマイノリティが、各ランクのなかで占める比率を聞いた。公正さに関する規範は、マイノリティをどのように扱うかで鮮明に現れるゆえ、内部昇進とかかわってその実態を確かめるためである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、その目的達成のために、次のような方法を採用している。第一に、調査地域は、日本、中国、インドネシア、韓国、マレイシア、タイ、ベトナムの代表的な都市とその周辺とする。第二に、調査対象は、各都市共通に市役所、自動車部品製造企業、スーパーマーケット運営企業の三つとする。この際、企業は基本的に「民族系」のものとする。第三に、調査方法は、基本的に人事担当者に対するインタビュー調査とする。 この方法は、本研究の課題達成のためにはオーソドックスなものと思われるが、その実現に予想以上難航しているが、本研究がやや遅れているもっとも大きな理由である。何より各都市共通に市役所、自動車部品製造企業、スーパーマーケット運営企業の「三点セット」を、それも「民族系」でそろえるのがそれほど容易でなかった。外資の参入が活発で、民族系として確立したものが多くないという事情のほか、中国のような国においては、たとえば市役所にアプローチすること自体がなかなか困難であった。現地の研究協力者の協力を得たうえでもである。そして、このような環境のなかで、調査対象側の了解を一つ一つとりながら、インタビュー日程を調整することは想像以上に難しかった。結果的に、日本や韓国、ベトナム、マレイシアなどに関しては比較的順調に進んでいるものの、中国やインドネシアなどに関しては今後よりインテンシブに調べることが求められており、なお全般的に補足調査が必要となっている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の経験をふまえ、調査の完成に全力を尽くす。この際、調査のやり方を若干見直す。従来のやり方は、各都市共通に市役所、自動車部品製造企業、スーパーマーケット運営企業の「三点セット」をそろえたうえで、一度の訪問で所期の目的を達成しようとするものであった。しかし、2年間の経験に照らすと、このようなやり方に多少無理があったことを認めざるをえない。「三点セット」の関係者の都合をすべて合わせるのは、容易でないことが明らかになっているからである。したがって、可能な限り効率的な日程で、インタビューのできるところから優先的に穴を埋めていき、かつ補充の必要な事項を追加調査で補うというやり方をとる。 なお、調査がおおむね終わった時点でその成果をまとめ、国際的に発信するとともに、調査対象となった各社会にもフィードバックする。今年度の下半期に社会政策学会の大会で分科会を設け、海外の研究協力者を集めて、研究成果を発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
基本的に調査対象の都市を十分調査できなかったことが、次年度使用額が生じたもっとも大きな理由である。 計画とおりに十分な調査ができなかったのは、前述したように、第一に、各都市共通に市役所と「民族系」の自動車部品製造企業およびスーパーマーケット運営企業の「三点セット」をそろえるのが容易でなかったためである。第二に、たとえば中国の場合、市役所にアプローチすること自体が困難であったためである。第三に、調査対象側の了解を一つ一つとりながら、インタビュー日程を合わせるのがなかなか難しかったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
したがって、今年度においては、各都市共通に市役所、自動車部品製造企業、スーパーマーケット運営企業の「三点セット」をそろえたうえで、一度の訪問で所期の目的を達成しようとした従来のやり方を見直し、つぎのようなやり方で次年度使用額を効率的に使用する。 すなわち、中国をはじめ引き続き本調査の必要な都市を対象に、前年度できなかった調査を効果的に実施する。と同時に、ベトナムなど補足調査の必要な都市を対象に、補充の必要な事項を中心に追加調査を実施する。
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