本研究は、日本・中国・インドネシア・韓国・マレイシア・タイ・ベトナムを対象として、アジアにおける、(ア)従業員ランク付けの仕組みと、(イ)ランク間移動のパターンを比較研究しようとするものである。平成28年度は、この骨格にしたがって、(ア)がすでに調査されている国については(イ)を、(ア)が十分調査されていない国についてはそれと合わせて(イ)を調査した。 (ア)に関する主な調査項目は、簡略化すれば、次のとおりである。(A)ランク付けの基本骨格。その①、ランク付けの基準。その②、ランク付けの構造。(B)ランク付けの要件。その①、特定のランクに特定の人を付けないための要件。その②、特定のランクに特定の人を付けるための要件。(C)ランク付けの選抜方法。 (イ)に関する主な調査項目は、次のとおりである。(A)従業員の典型的な移動経路。まずは、男性と女性にわけで、それぞれの平均的な従業員がランク間をどのように移動するかを聞いた。これは、代表的な属性の「性」が移動パターンにどのように影響するかをみるためである。次に、高卒と大卒にわけで、それぞれがどのように移動するかを聞いた。これは、能力の代表指標の「学歴」が移動パターンにどのように影響するかをみるためである。(B)重要なランクにおける内部昇進比率。これは、ランク間移動が基本的にどの程度内部化されているかをみるためである。まずは、現場監督者(組長クラス)のうちどの程度が内部昇進によるものかを聞いた。次に、中間管理者(課長クラス)のうちどの程度が内部昇進によるものかを聞いた。これら二つを選んだのは、ブルーカラーとホワイトカラーのそれぞれのパターンと両者間の関係をみるためである。(C)マイノリティのランク付けの程度。具体的にはマイノリティが、各ランクのなかで占める比率を聞いた。これは、公正さに関する規範の浸透度を確かめるためである。
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