研究課題/領域番号 |
26380671
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
安藤 孝敏 横浜国立大学, 教育人間科学部, 教授 (00202789)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 被援助志向性 / 援助拒否 / 社会的孤立 / 高齢者 / 支援方略 |
研究実績の概要 |
本研究は、周囲からの支援を頑なに拒否する、いわゆる援助拒否の姿勢を取りながら地域で生活を続ける高齢者への支援方略を検討することが目的である。 平成27年度は、平成26年度に実施した大規模な質問紙調査のデータを詳細に分析し、改訂版被援助志向性尺度(12項目)の妥当性と信頼性を検証するとともに、被援助志向性と心理・社会的特性との関連、被援助志向性と実際のサービス受領の関係についても検討した。平成27年10月に、タイ国チェンマイで開催された国際老年学会アジア・オセアニア地域会議において、改訂版尺度の作成に関する分析結果をポスターにて発表した。平成27年度末までに、これらの研究成果を取りまとめて学術雑誌へ投稿するための準備を終えた。また、次年度の調査に向けて、質問紙調査の内容を再検討した。 上記の質問紙調査の分析と並行して、平成27年12月に、東京都に拠点を置く支援団体に所属する保健師2名を対象に、団体が展開する高齢者見守りサービスを利用する高齢者への支援方略について、聞き取り調査を実施した。その結果、見守りサービスを利用する高齢者の中には、あえて介護保険を利用しようとしないなど、「援助を受けること」に対して必ずしも積極的ではない人もいることが分かった。そういった「被援助志向性の高くない」高齢者に対しては、いかに魅力的なコンテンツを用意し、団体の取り組みに関心を持ってもらえるかを意識するようにしているとの意見が得られた。またコンテンツの用意に当たっては、活動内容や頻度、想定する参加者に幅を持たせることで、活動の多様性に留意しているとの発言があった。また、援助拒否傾向のある高齢者の中には、「他人の世話にはならない」といった自分の信念や考えが強い人も多いため、それを認めながらもいかに寄り添うかという押し引きの難しさや、対象者の自立心を損なうことのない介入の重要性が指摘された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、当初の予定どおりに、大規模質問紙調査のデータを詳細に検討し、その成果を国際学会にて発表することができた。また、専門職を対象とする聞き取り調査が実施できた。これらの研究成果を含めて、次年度の研究に向けて質問紙調査の内容について再検討できた。
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今後の研究の推進方策 |
地域在住の高齢者を対象とする地域を限定した質問紙調査を調査会社に委託し実施する。平成26年の質問紙調査を踏襲しつつ、支援を受けることに積極的でない高齢者への支援方略について検討できる内容を盛り込む予定である。また、被援助志向性の高い高齢者と低い高齢者への聞き取り調査も実施する。これらの調査結果から、援助拒否傾向の強い高齢者に対する効果的な支援方略について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度の大規模質問紙調査が予定よりも安価な委託費で実施できたこと、平成27年度の聞き取り調査で謝金などが発生しなかったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度である平成28年度の質問紙調査の実施(回収率を高くするための工夫)に充当する予定である。
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