研究最終年度の本年は、過去2年間の研究成果のまとめと新たな研究課題の立案に重点を置いて研究活動を行った。5月には、在比の日比ダブルの若者およびその支援団体の専門家を日本に招聘し、日本の関連団体や大学等の研究機関および大学生との交流を実施することができた。その中で、フィリピンで生育した日比ダブルの若者へのインタビューとそれに対するフィードバックを、「ルーツ」と「ルート」という2つのキーワードを用いて分析した。その中で、彼らの成育してきた「ルート」が、単にフィリピン人の母親や日本人の父親との関係だけでなく、支援組織とのかかわりと、その中での日比間の移動経験によっても構築されてきていることが確認された。また、2年目の研究成果として刊行した紀要論文の内容について、インタビュー協力者からフィードバックを得、フォローアップ・インタビューも実施した。 また、今年度は他大学での関連する研究会やワークショップに参加する機会も多く、そこで「移動する子ども・若者」および「ミックス・ルーツや多文化家族の中で育つ子ども・若者」という観点から国内外の多くの研究者と意見交換を行うことができた。 こうした研究成果を踏まえて、あらためて日比ダブルの若者たちの生育「ルート」とアイデンティティの関係について、歴史的経緯を含めた時間軸を重視した研究を行う必要性および重要性を確認したことで、H29年度新規採択の基盤研究(B)「日比間の人の移動における支援組織の役割~移住女性とJFCの経験に着目して」の発案・計画につながった。
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