本研究は、成育期における日比間のトランスナショナルな移動経験を通して、「日比ダブル」の若者がどのようなアイデンティティ構築過程を経験するのかを、現在20 代前半となった彼ら・彼女らの語りから実証的に明らかにすることを目的とした。特に「ルーツ」と「ルート」の概念にそれぞれ着目してインタビュー調査の結果を分析した結果、日本育ちおよびフィリピン育ちそれぞれの日比ダブルの若者にとって、「ルーツ」をめぐる学校や支援組織など家庭「外」での経験が、「ルート」として彼らのアイデンティティの形成に大きくかかわっていることが明らかになった。
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