本稿では、ジェンダー公正な社会関係資本の創出をめざして、コミュニティの違いに応じて社会関係資本(以下SC)と性別の関係がどのように異なるか現状分析を行った。日本社会では結束型社会関係資本が重要な役割をもっており、結束型SCがもつ性質から、その資本に依存した政策では女性のアンペイドワークに依存し、ジェンダー秩序を無自覚的に強化する恐れもある。結束型の社会関係資本は地域によって異なることから、質問紙調査および聞き取り調査を大都市部、地方都市、農村部の三地域で行い検討した。前回科研では地方都市の新潟市での調査を実施したが、今回さらに東京都世田谷区、和歌山県古座川町において住民基本台帳からサンプリングを行い郵送による質問紙調査、さらに協力者をつのり聞き取り調査を実施した。 分析結果から、地域が所有しているSCの型とジェンダーの権力関係の関係を明らかにした。世田谷区は、地縁血縁関係が弱く子供関係を中心に豊かなSCを女性はもっているが、夫は職場、妻は専業主婦という都市型の性別役割分業に依存する傾向もある。新潟市は首都圏にくらべ地縁・血縁関係が残っており、「男性が町内会・自治会などの地域活動」「女性が子供やケア活動」という伝統的なジェンダー権力構造が地域社会にみられる。古座川町は多くの活動やネットワークが地縁・血縁関係と強く結びつき、SCの量については男女差があまりみられないのが特徴である。高齢化がすすむ地域社会でのジェンダー構造の変容についても示唆的な地域であった。 今回の調査研究により、都市化や個人化・さらに高齢化の進展の度合いによってSCをめぐるジェンダーの権力作用が異なることを明らかにした。SC醸成にはジェンダー公正への視点が必要であり、その地域の質的な文脈の中ですすめられることが重要だということを提唱した。
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