研究課題/領域番号 |
26380678
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
柏尾 珠紀 滋賀大学, 環境総合研究センター, 客員教授 (70414034)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 農村 / 漁村 / 女性 / ジェンダー / 生活 / 農業の機械化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、戦後の農山漁村社会の変化に関する研究において、もっとも明らかにされていない日常の暮らしのなかにある女性力の解明にある。というのも、戦後の農山村地域における発展の一翼を担った土地改良事業および稲作農業の機械化一貫体系の成立の背後にある農村の女性力の把握と意義を明らかにすることは、今後の地域再生や地域づくりを展望するにあたり必要不可欠だからである。今年度は、滋賀県琵琶湖周辺部の農村においてヒアリング調査をおこなうことで、稲作農業の機械化以前の役畜労働および機械化初期における女性と男性の農作業の詳細について実態把握を進めたと同時に、文献の収集および資料の発掘に努めた。当時の農村女性たちがどのようなネットワークを利用することで土地改良事業の土木工事に参入したのか、そしてそのような女性のネットワークと役畜の共同利用グループに関連があるのかについても調査を進めた。数多くの事例を聞き取り資料を収集することができたことで、技術発展におけるジェンダーを多面的に考察する端緒を掴むことができた。また、食の変化と圃場整備や灌漑の近代化、農業の機械化との関連を検討するための調査も予定通り進めることができ、数多くのデータを収集することができた。これらの成果の一部は日本村落研究学会西日本支部会において報告をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は農山漁村集落における高齢女性たちへのヒアリング調査を重点的におこなった。研究実施計画の通り、4月から7月は滋賀県の琵琶湖沿岸部の複数集落において集落調査をおこなった。また、長期の休みには瀬戸内海沿岸の島である男木島でも調査を実施した。滋賀県で昭和30、40年代に実施された土地改良事業において、女性の土木工事への労働参入がどの程度存在したのかに関する調査を予定通り実施した。またその際には、役畜利用における女性ネットワークに関する実態調査も進めた。これにより当時の農村女性たちが従事した労働の内容をかなり明らかにすることができた。また、女性の農業労働の内容変化と食の変化との関係を明らかにするために、滋賀県の琵琶湖沿岸部における水田漁労に関する聞き取り調査も実施した。この調査により、滋賀県における水田漁労の実態とジェンダー関係、および、稲作農業の機械化後に女性の漁労が変化したことが明らかになった。これらの結果の一部は、日本村落研究学会西日本支部会において発表した。 上記の通り、交付申請書に記載した各事項について概ね予定通り順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2015年は、さらに資料と事例を充実させるために、昨年予備調査をおこなった新潟県十日町市および瀬戸内海の島においてフィールド調査を進め、同時に、滋賀県においても昨年同様にヒアリング調査を実施する。それにより平地農村部と山間地農村部における女性力の内容やその違い、また、漁村における女性力の内容や意義を明らかにすることができると考えている。他方で、現在までのヒアリングのデータを整理・資料化し、文献を読み込むことで分析枠組みの構築にも着手する予定である。成果は機会を見つけて随時発表する予定であるが、27年も日本村落研究学会で報告をおこなう予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は農村の高齢者たちに複数回のヒアリングをおこなうことで進めている。調査を進めるなかでヒアリング調査を依頼していた島のインフォーマントより延期の申し出があり調査を延期した。その日程を滋賀県内の調査に充当したことにより差額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
延期したヒアリング調査を実施するとともに、本年度に計画していたフィールド調査を実施して、それらの分析に使用する。
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