研究課題/領域番号 |
26380680
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
岩佐 卓也 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (00346230)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ストライキ / 政権参加 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、ドイツのストライキの動向を理解する上で重要な要素である、政権と労働組合の関係について検討した。政権に労働組合の利益が反映されているという認識が強まればストライキの志向は弱くなり、また逆も成り立つ。とくに問題となるのが州の政権への社会民主党、左翼党の政権参加である。これは現地の組合役員のインタビューから得た知見である。 以上の関係をさらに対象を絞って具体的に探求するために、2007年に結成された左翼党の政権参加をめぐる問題を検討した。社会主義政党、共産主義政党、左翼政党などの政党は、現体制を根底的に批判し、労働者や社会的弱者の利益を非妥協的に主張することに自らの存在意義を置いている。しかしそうした政党に政権に参加する機会が訪れたとき、これに応ずるべきか、それともあくまでも野党にとどまるべきかという問題が生じ、しばしば政権参加「積極派」と「批判派」が形成される。そこでドイツの左翼党を対象に、この両者の論争を紹介し、分析を行った。まず、左翼党の前身政党であるWASGとPDSの間には政権参加への態度をめぐって深い対立が存在した。PDSの各州における政権参加の評価と党と労働組合をはじめとする社会運動との関係が重要な争点であった。2007年に両党が統合され左翼党が結成されたのちも、この対立は党内対立へと引き継がれた。2011年に採択される党綱領の制定をめぐっては、「赤い停止線」=政権参加の最低条件が論点となった。こうした対立は現在でも継続している。本稿では最後に、「積極派」と「批判派」の対立の根本には国家観の相違がある。以上の分析の成果を査読付き論文として投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画には「政権と労働組合」関係を含めていなかったが、研究の進捗とともに重要な論点であることが分かり、「研究実績の概要」で述べた通り、平成27度はそのことを研究した。これによって、ドイツにおけるストライキの新動向を捉えるより深い視点を据えることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は最終年度であり、この二年間の研究を総括した上で、さらに実証的な調査を行いたいと考えている。具体的な対象としては、アマゾン社におけるストライキについて現地調査を行うことを検討している。このストライキは、2013年から現在でも係争中であり、労働協約締結を争点としたものである。争点、社会的な関心の高さ、規模等において、現在ドイツのストライキの新動向を検討する上で適切な対象であると思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究上必要なドイツの文献について発注したところ、納入の見込みが年度を超えることになったため、それに相当する額を次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
上述の文献について次年度に再度発注する。
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