本研究は、学童保育(放課後児童健全育成事業)を中心とした子どもの放課後児童対策を支える多様な組織や社会関係資本のネットワークを明らかにし、その地域的文脈を分析することにより、学童期の子育て支援のための福祉コミュニティの可能性を探ることを試みたものである。 2014-2015年度は、学童保育の歴史・制度についての文献研究と資料の分析に加えて、山口県内・福岡県内・横浜市・川崎市を中心に学童保育の実態調査を行った。その結果、地域ごとのニーズに応じた保護者による開設運動から展開してきた学童保育が多い中、現在は保護者運営のみならず、民営化や官民による協働など運営主体や担い手が多様化している実態が明らかとなった。さらに、1990年代以上の児童福祉法改正や放課後子どもプランの推進など、近年の学童保育の制度化も、これらの学童保育運営の多様化に大きく影響していることも明らかであった。 2016-2017年度には事例の補足調査に加えて、保護者参加型の官民協働運営による学童保育において保護者意識調査を行った。共働き世帯が増加する中、調査結果から親は時間に追われる子育て環境に置かれていると同時に、学童保育については消費者化する親の意識もうかがえた。 本研究では、大都市部ほど学童保育そのものの民営化が進むとともに習い事や体験学習といった学校外教育の場としての学童保育と従来の学童保育が併存しており、家庭の経済的格差が子どもが利用できる学童保育の環境や質に影響する可能性もあることがわかった。「子育ての社会化」を市場化ではなく、地域資源の活用や保護者の関わりといった観点から検討する必要性が明らかとなった。
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