最終年度は、農業関係の行政データ、世帯における水田利用のデータおよび食糧入手の現状についてのデータ、オイ族資料(慣習法と歴史)の翻訳と分析を行い、それらをもとに、水田漁撈の意味について考察してゆくことを主な目的としていた。それと同時に、環境変化、特にプランテーションによる水環境の変化についての聞き取りも行った。現地調査は水田に入ることが可能な3月に行なった。 それらの結果、オイ族は北部から移住してきたのであるが、移住地=調査地周辺では古くから低地と山地(居住地)を往復して水田稲作が行われていたことが明らかになった。また、伝統的な米の品種を使い続けている村がある一方で、プランテーション労働者が多い村では、収穫期間が短い品種が導入される傾向があることがわかった。また、プランテーション農場が取水をはじめた影響で川の水量が減少し、それが農業用水にも影響を与えていること、プランテーション農場などからの農薬の影響(と住民が考える)による川魚の減少などが問題化されていた。一方で、プランテーションが地域に導入される以前の2008年のデータと比較すると、予期に反して水田漁撈の実施世帯率、水田漁撈装置の数などは増加を続けていたこと、(ビールなどの購入酒類の摂取は増加した一方で食事に関しては)魚食の割合が依然として圧倒的に高いことが明らかになった。特に村の外に働きに出ることのない高齢者にとっては、水田の魚は重要なたんぱく源であることが確認できた。また、村人が、プランテーション農場だけへの依存を自ら警戒し、水田漁撈のシステムを維持しようとする強い意志をもち、そのための環境(水や農薬)への関心をもつとともに、工夫をしていることも明らかとなった。 2017年3月調査分は現在整理中のため、それを含めた成果は、2017年6月に学会報告するとともに論文化する予定である。
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