環境先進国ドイツでは自然エネルギー事業が盛んであるが、環境運動を分析する枠組みとして「リスク論」や「新しい社会運動」といった視点が存在してきた。しかしながら、これまでの研究では、理念を扱う「文化的視点」が乏しかった。本研究では自然エネルギーを論じるにあたって用いられる「持続可能性」に、文化的視点が必要であるという仮説のもと、バーデン・ヴュルテンベルク州シュットットガルト市議会議員を含め7名にインタビューを実施した。 インタビュー調査の結果、シュットットガルト近郊のシュヴァーベン地方においては、自然エネルギー推進にあたって「価値的保守」の視点が有効であること、そして「価値的保守」という言葉は1960年代に登場したという語りを得た。「価値的保守」は、多くの人が宗教的由来を持つと考えており、このため日本における「持続可能性」と差異が見られる可能性があることを明らかにした。また有機農法には積極的な人智学者が、太陽光発電には懐疑的という知見も得た。
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