最終年度に実施した研究は、テーマに沿ってこれまで実施してきた調査・研究の全般的なフォローアップ作業として、国立国会図書館などの所蔵史料や洋書資料などを用い研究内容の精査・確認を行った。また、成果としては斎藤憲との共著『奄美 日本を求め、ヤマトに抗う島』(南方新社・2019年)を刊行し、本研究結果の主な内容を発表した。 研究期間を通じて、太平洋島嶼地域の住民運動が、日米の核燃料サイクル政策の遂行に与えた影響、特に米国からの視点では核拡散防止政策と密接にかかわる部分に与えた影響についても、実態を解明した。その結果、日本にとっては当初予定していたタイムテーブルに沿った商業再処理が展開できなかったという点、米国にとっては日本の再処理実施(核拡散上問題となる機微核技術獲得と同義)を遅らせた点に、当該住民運動は大きな影響を与えたことが判明した。 特に強調すべきは、太平洋島嶼地域のものばかりでなく、それらを引き継ぐ形になった本土沿岸部の商業再処理工場立地計画(島嶼部以降の計画)に反対した住民運動を含めた社会的相互作用の影響が、核燃料サイクル政策関連のみならず1970年代から80年代にかけての日本の原子力政策全体にまで、様々な形で広がっていることが判明してきた点である。またそれらの影響は、現時点で政府が国内外で遂行する核・原子力政策にも何らかの形で残存していると考えられる。 商業再処理工場をはじめとする核燃料サイクル施設立地計画が本土沿岸部に移行してからの時期の地域の運動事例の調査については、新たな研究課題として実施予定である。
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