本研究は、(1)移民受け入れの歴史の長いアメリカ合衆国における英語を母語としない児童生徒の教育の取り組みや制度を調査し、(2)日本の教育現場における事例研究を行い、(3)両国の状況を比較しつつ、児童生徒の教育達成や社会適応という観点から、言語的マイノリティ生徒の課題を明らかにし、その具体的解決策について検討することを目的としている。 平成26年度は、アメリカにおける研究調査として、ロサンゼルス市でヒスパニック系コミュニティの移民支援団体を訪問調査した。また、イングリッシュ・イマージョンと二言語教育プログラムを授業言語として使用しているヒスパニック系児童が多数を占める学校を訪問し、異なる教育形態の児童への教育効果について調査を実施した。さらに、韓国系の子どもたちが多数在籍する小学校における英語と韓国語を併用したバイリンガル・プログラムに関して聞き取り調査を実施した。日本における調査については、神奈川県の県立高校で、外国籍生徒の日本語クラス等の取り出し授業の見学および教師、生徒への聞き取り調査を実施した。さらに、日米両国におけるマイノリティ生徒の教育達成や社会適応に関する文献資料の収集と考察を行った。 以上の調査から、ロサンゼルスのヒスパニック系コミュニティでは、移民家族の抱える諸問題に対して、地域の移民支援団体が成人対象の英語クラスや、子どもの学習プログラム、生活支援等の提供を通じて、コミュニティの結節機関として重要な役割を担ってきたこと、同時に、必要とされる支援内容が時代によって変化してきたことが明らかになった。日本の調査においては、神奈川県の高校の事例から、外国籍生徒の家庭環境等が彼らの教育達成や社会適応に影響を及ぼしていることが示唆された。
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