本研究は、(1)移民受け入れの歴史の長いアメリカ合衆国における英語を母語としない児童生徒の教育の取り組みや制度を調査し、(2)日本の教育現場における事例研究を行い、(3)両国の状況を比較しつつ、児童生徒の教育達成や社会適応という観点から、言語的マイノリティ生徒の課題を明らかにし、その具体的解決策について検討することを目的としている。 平成28年度は、実施計画に沿って、ロサンゼルスの移民支援団体や移民支援団体間の有機的なネットワークが移民の社会適応や子どもの教育にどのような役割を果たしているのか、どのような課題があるのかについて調査を行った。また、日本での調査として、外国籍生徒を対象にした取り組みを行う神奈川県の高校や地域で支援活動を行っている団体の訪問調査を行った。 アメリカにおける調査から、ロサンゼルスの中米系移民コミュニティでは、移民たちが長年地域で移民へのサービスや支援を提供してきた団体や教会を通じて自分たちに必要なサービスや支援を取捨選択して受けていること、そのようなホスト社会のコミュニティ・ネットワークが移民たちの生活の支えになっていることが示唆された。 日本における調査から、神奈川県の高校で外国籍生徒対象の新入生ガイダンスや生徒・教員への聞き取り、神奈川県教育委員会主催の高校進学ガイダンスの活動を通して、地域の支援団体や学校の日本語教室などが、外国籍生徒にとって日本の学校教育制度や高校進学についての情報を得る貴重な場であることが示唆された。また、生徒を対象とした聞き取り調査から、呼びよせ家族(multinuclear households)における親と子どもの関係についても検討を行った。
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