本研究は(1)移民受け入れの歴史の長いアメリカ合衆国における英語を母語としない児童生徒の教育の取り組みや制度を調査し、(2)日本の教育現場における事例研究を行い、(3)両国の状況を比較しつつ、児童生徒の教育達成や社会適応という観点から、言語的マイノリティ生徒の課題を明らかにし、その具体的解決策について検討することを目的としている。 最終年度は、アメリカ・カリフォルニア州のロサンゼルスの移民コミュニティの学校での調査や移民コミュニティで移民を支援している団体を対象にした調査から、ロサンゼルスの中米系および韓国系移民コミュニティには、移民を様々な面から支援する団体が数多く存在すること、諸団体の個々の活動内容は重複する部分があるものの、団体の特殊性や得意分野があり、ある程度の棲み分けのあることが示された。これらインフォーマルな団体・組織の社会関係ネットワークが、ホスト社会での中米系移民の子どもたちの教育達成や社会適応に一定の役割を果たしていることを明らかにした。また、神奈川県の外国につながる生徒が多数在籍する高校や外国人住民を支援する団体、行政を対象にした調査から、親の国際移動が生徒の学力形成にマイナスの影響を及ぼす要因として、ひとり親世帯、親の再婚、生徒の滞在資格、親の長時間労働などが示唆された。また、生徒が日本の学校で適応していくための資源として、祖国とつながりのあるエスニックネットワークや地域の様々な支援団体の役割の大きいことが示唆された。
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