研究課題/領域番号 |
26380695
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研究機関 | 聖徳大学 |
研究代表者 |
川口 一美 聖徳大学, 心理・福祉学部, 准教授 (00352675)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ソーシャルキャピタル / 社会関係資本 / 孤独死 / 孤立死 / 団地 / 社会問題 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、本研究4年の期間のうち、2年目である。とりわけ、今年度は、フィールドでの調査票を用いたアンケートの実施とその分析が主な内容であった。アンケートについては、昨年度より実施することができたため、よりスムーズな工程で実施ができた。 この調査のフィールドである地域の団地において、全数調査を団地自治会と共同で行った。(約3000世帯の規模の団地での実施。実際の配布は2700戸で確実に空き部屋となっている300戸については、配布していない。回答は450戸。) 実施結果として、300戸の空き部屋以外にも空き部屋等や入居者の確認も行った。これにより、これまで把握しきれていなかった、現在の空部屋、居住状況を一覧にまとめることができた。加えて、この団地内の住民の他者との接触(近所づきあい、家族や親戚とのかかわり、外出の機会)についても知ることができた。 地域内の関係においては、関係のある(ネットワークを持っている)人と関係の希薄な(ネットワークのない)人がおり、団地内の友人知人がいない、助け合える人が(団地内に)いないとする関係性の希薄な人は、顔見知りの団地住民であっても、何かしらのやり取りやちょっとした頼み事も難しいと感じていた。また困ったときは団地外にいる家族や親せきに相談するとしていた。(ただ、いざという時に、その団地外の人が来てくれるかどうかはわからない) また、孤立してしまいそうな「孤立者予備軍」は、関わる人がいない、一緒にいて楽しく過ごせる人がいない、ちょっとした用事を頼める人がいないなど(関わる人が「全くいない」とする数も少なくない)の点は、今後の対応、ネットワークにいかに組み込んでいけるかを考える必要がある。なぜ、関わる人がいないのか、関われない、関わらないのかなど次年度に質的に聞き取りし、今後の方向性と対応を具体的なものにしていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度に実施する予定となっていた、調査票調査を実施できたこと、また、それを分析し示したことから、順調に進展していると考える。 加えて、次年度に向けての橋渡しとして、フィールドでの対象地域、対象者との関係性も徐々に構築してきているため、次年度の質的調査(インタビューや観察)についても理解が得られると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度はフィールドでの質的調査を行う。よって、個々との関係を作りながら、調査をしていくこととなるため、信頼関係の構築のみならず、契約や倫理、相手の生活等への尊重、配慮を最大限しつつ、活動していく。 2つの団地において、住民同士がどのような関係性を構築しているのか、また、そのネットワークに入らない住民は、なぜ入らないのか、本当に困っているときにどうしているのかなどを聞き取り、観察をしていく。 これについては、調査票上では、例えば「困ったときには、家族や親せき等に相談する」とした人が、困ってすぐの対応が求められる際、自治会や地域のよろず相談を請け負うセンターへ駆け込むなどのズレがあることなどを確かめたい。それによって、ネットワークの希薄な人の関わり、またそのネットワークの網の目の増やし方を考えていく。 団地の自治会などで、定点観察、聞き取り等を行うことで、どんな人がどんな相談(目的)でやってくるのか。またそこでどんな関わりに発展するのか(関わりとして発展することがあるのか、今ある関わりが発展していくのか)など実際の生の声を確認していく。そこから、課題や必要とする対応を明らかにする。今後今あるネットワークに加えることが可能な、社会資源を見出し、ネットワークに入っていない人たちを取り込めるようなネットワーク構築を目指す。 また地域住民が今後この社会状況において、助け合えるようにするには、要となるような(ここでは自治会等)社会資源は何を今後すべきなのか、また、住民自らができることは何か、具体的な対策を調査票の「これからの団地に必要なこと」の項目を中心に探っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
①今年度フィールドで使用しようとしていた物品を購入せずに済んだため。(リサイクル品で代替が可能だったため。) ②調査票調査を行った結果、次年度より丁寧にフィールドでの聞き取りをする必要があると判断したため。(フィールドに行く回数を増やしたほうが良いと判断したため。被調査者の都合等に合わせた対応をしやすくするため)
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次年度使用額の使用計画 |
フィールド調査を行う際の交通費として使用したい。
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