研究課題/領域番号 |
26380698
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
山田 信行 駒澤大学, 文学部, 教授 (80287002)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 社会運動 / 世界システム / 半周辺 / マレーシア / エスニシティ / 階級 |
研究実績の概要 |
前年度と同様に、平成27年度においても、文献を通じた理論的研究を進めるとともに、夏期休暇と春期休暇期間を利用して、マレーシアに赴き、反システム運動の担い手である、様々なNGOs、労働組合、および政党などを拠点とする活動家や、研究者へのインタビュー調査を行った。その結果、明らかになったのは、以下の諸点である。 (1)民族解放運動については、重点的な研究対象としているHINDRAFとその活動の背景には、経済発展の恩恵をあまり受けることがなかったインド系国民の貧困が存在することがあらためて確認された。その結果、図らずも民族解放運動が「階級性」に彩られた性格をもっていることが明示的に理解されるにいたった。 (2)労働運動については、電子産業を中心に調査を行った結果、労働組合は移民労働者を含めた組織化を試みているものの、雇主の対抗的な姿勢を打ち負かすことができず、実効性をもった職場規制を達成しえていない実態が明らかとなった。例えば、法的には労働組合の代表権が確立されていても、労働協約の締結を拒否されるなどの事態が日常化していることが確認された。 (3)新しい社会運動(環境保護運動)については、華人の新中間階級が中心的な主体となっていることがあらためて確認されるとともに、政党とNGOとの関係をめぐって、異なるスタンスをとるケースが存在することが明らかとなった。この点は、マレーシアにおける政党政治への不信感が背景にあるといえよう。 (4)以上のような反システム運動に加えて、いわゆる市民運動については、BERSIHと呼ばれる選挙制度改革運動においても、経済的な状況の悪化に起因する不満に代表される「階級性」が伏在している可能性があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、研究を行えているので、おおむね順調な進捗状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度についても、基本的には過去2年間と同様の方針で研究を行っていく。とりわけ、重点的な調査対象としては、インド系国民によって、これまで行われてきたプランテーションにおける待遇改善要求運動や、プランテーションから立ち退きを迫られたインド系住民による補償要求運動などがあげられる。さらには、民族解放運動にみられる「階級性」を検証するために、マレーシア社会党の活動にも注目することになろう。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に実施した海外出張費(旅費)を次年度の支払いに繰り越したため。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越した旅費について新年度に入るとともに、すぐに支払いを受ける予定であり、大きな使用計画の変更な発生しない。
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