日本における有事を含む広義の緊急事態対処および秘密保護の法制度が、2001年以降大きな変容を見せるなか、本研究は実施された。1年目の2014年度には特定秘密保護法が施行、さらに2年目の2015年度には安保関連法制の制定により有事法制もより法整備が進み、これに伴い言論の自由に関する規定も盛り込まれるなどした。また同時並行して、2015年末から3年目の2016年にかけて、とりわけ放送現場に対する行政あるいは政党による「介入」が議論の対象となり、放送法の解釈及びいわゆる公権力とメディアの関係が問われることとなった。 そこで本研究においては、第1に特定秘密保護法の法構造と運用監視システム、同法と取材・報道の自由の関係についての研究を実施した。関連して、アメリカとイギリスの政府・議会・市民団体・研究機関等の関係機関を視察、関係者との意見交換を実施した。第2に放送法の法解釈と行政指導等の行政機関の対応について改めて歴史的考察を行い、併せて放送局の現場における対応についてのヒアリングを実施した。関連して、ドイツを訪問し、ZDFやアクセルシュプリンガー社ほかドイツを代表する報道機関及び放送関連機関等を視察、関係者との意見交換を実施した。 こうした法制度、行政運用、そして取材・報道現場の新聞社・放送局の対応を分析・考察したことをベースに、有事・秘密保護法制が言論の自由及びジャーナリズム活動に対する影響をまとめ、学会・論稿での発表を経て、別に示す通りの単著として研究成果をまとめた(英文による海外出版物を含む)。ただし、言論の自由の縮減状況は2017年以降も継続しており、本研究は継続・発展させる必要があると思われものであり、とりわけジャーナリズム活動の「自主規制」の側面から研究を発展させたいと考えている。
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