研究課題/領域番号 |
26380702
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
渡辺 芳 東洋大学, 人間科学総合研究所, 客員研究員 (70459832)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ホームレス / 地域移動 / 犯罪経験 / 幼少期の貧困 |
研究実績の概要 |
2018年度の研究は、前年度に引き続き、川崎市ホームレス一時宿泊施設「愛生寮」入所者台帳のデータ整理とその数量データ化、統計処理のためのカテゴリー化を行った。カテゴリー化に際して、自立志向の強い層(退寮者データ)ならびに福祉・医療支援を要する者(緊急宿泊者データ)、年末年始期間の一時宿泊者(越年利用者)にグループ分けをして、それぞれの特徴を探った。デジタル化は、台帳の定型フォーマットにしたがって行った。 この他に、台帳記入者による自由回答記述を数量化データに処理をした。台帳の定型データのほかに、出身地、移動歴、職歴(初職、最長職、直前職、現職)、ホームレス化要因、社会福祉制度の利用、地域移動の理由、幼少期の成育環境を自由回答記述から抽出した。 抽出したデータから、どのような出来事がホームレス化に影響を与えているのかに注目をして、データを整理した。ホームレス当事者の語りから、人生上の大きな出来事を経験した者、特別な出来事がなかった者に分けられる。その大きな出来事の種類は、幼少期の貧困、家族別離、事故、病気・障害、犯罪を上げることができる。特別な出来事の記述がない場合は、幼少期の貧困、度重なる転職経験が大きく影響を与えていた。そこで経験した貧困が、不安定生活(不安定な雇用と住居)を生み、社会生活の不安定を生んでいることがわかった。 2018年度の研究では、(1)犯罪経験のある者、(2)幼少期の貧困経験を経ている者、に注目をして、分析を行った。得られた知見は以下の通りである。(1)犯罪経験のある者:複数回の刑務所入所によって、生活の安定性が損なわれ、社会福祉支援を十分に受けることのないまま、ホームレスのなかの処遇困難状況を生み出していた。(2)幼少期の貧困を経ている者:生まれ家族の不安定さによって、経済的困窮ならびに地域移動をもたらし、その影響が中高年期にも影響を与えていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在、入所者台帳のデジタルデータ化を終えた状況である。しかし、自由回答記述のデジタル化とその数量化処理の途上にある。また、関係機関へのヒアリングを終了していない。 よって、研究は、当初の予定よりも、やや遅れている状況にある。 その理由は、入所者台帳の定型フォーマットへの記入不備のため、記入なし項目、独自項目について、台帳と照らし合わせて加工を行っているため、想定以上に作業が難航しているためである。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、これまでの研究で得られた知見をもとに、入所者台帳の自由回答記述部分の統計分析、関係機関へのヒアリングを行うことにしたい。 統計分析については、重回帰分析を行い、どのような出来事がホームレス化に影響を及ぼしているのか把握し、2000年代の川崎市のホームレスの状況を俯瞰的にとらえる。 これまで得られた調査上の知見、社会的排除に関する理論的基盤をもとにして、2000年代に見られた社会的排除の状況を把握し、そこから、2010年代以降の社会的排除状況の要因分析ならびに、政策的提言をあわせてすることにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由については、研究の進行が遅れているためである。統計処理にあたって必要な作業アルバイトの雇用ならびに、学会報告の旅費・宿泊費、関係機関への調査費に用いる予定である。
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