本研究は計画当初、以下の3つの課題を掲げた。 1)大規模調査に向けた調査票の開発・作成、2)「マタニティ・ハラスメント防止規程」の検討、3)職場における「多様な身体性」の追究である。 1)については、女性労働者を対象とした調査だけでなく、管理職調査、同僚等の職場調査の必要性について考察、検討をすすめてきた。妊娠した女性労働者と一緒に働いた経験をもつ男女労働者への調査は、平成26年度から今年度まで継続的に実施してきたが、これまで調査対象となったのは自治体職員(151票)民間企業(126票)教育機関(118票)である。これらのデータからは、問題への理解と実際の支援にはギャップがあること、支援の方法についての情報がないこと、メディア等の報道に対する反発など、職場側の課題も明らかになった。これを受け管理職・同僚等職場調査の調査票を作成し、今後は職場調査の必要性について提言していく。 2)「マタニティ・ハラスメント防止規程」については、防止措置の義務化が平成30年1月から施行されたことを受け、防止法の認知度等について民間企業を対象にアンケート調査を実施、また企業のCSR担当者へのヒアリング調査を実施した。さらに政府が推進する「働き方改革」との関連から考察した論文「職場における妊娠・出産の権利」(『生活経済政策』第246号掲載)を執筆した。 3)「多様な身体性」の追究については韓国調査をもとに、ソウル市が取り組んでいるワーキングマザーに特化した相談支援センターの相談事業活動に焦点をあてた論文「韓国の女性労働者とマタニティ・ハラスメント」(『立教社会福祉研究』第37号掲載)を執筆した。また日本のNPO法人「マタハラnet」の相談支援活動に着目し、「マタハラnet」が2014年から2017年12月までに対応した200件を超える相談事例について分析をした。この結果は今後報告する予定である。
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