研究課題/領域番号 |
26380705
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研究機関 | 日本女子体育大学 |
研究代表者 |
青木 純一 日本女子体育大学, 体育学部, 教授 (10389869)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 結核療養所 / 患者運動 / 療養生活 |
研究実績の概要 |
平成28年度はおもに以下の研究活動を行った。 1.資料収集 終戦から結核が治る病気に変わり結核療養所がしだいに減少する1945年~1965年頃までの結核療養所を中心に、療養所が発行した記念誌、年報、療養所内の同人誌などを収集した。今年度はとくに福島県、石川県、富山県、福井県について現地に赴き、調査を実施した。 2.資料解読 朝日訴訟の会が発行する機関誌を中心に、患者運動が社会に発信した内容の分析を行った。このほかにも東京市療養所、清瀬療養所の年報や患者組織が発行する機関誌などを中心に同様の分析を進めた。その結果、各地の結核療養所では軽症患者を中心に様々な文化活動や政治活動が組織され、これらの組織が母体となって患者運動に繋がっていったことがわかった。患者運動がこれだけ大規模になった大きな理由に軽症患者の存在がある。軽症の患者は療養生活の改善にむけてときに療養所の外で行われる集会やデモに積極的に参加し、患者運動を盛り上げている。結核療養所で生活するこうした患者の動きは、既成の政治組織や市民団体とも連帯し、しだいに大きな運動の輪になって広がっていく。さらに、結核療養所以外の自宅で療養する患者たちもこうした運動に繋がることで、結核療養所の情報発信力はますます強まったと言える。 3.論文作成 拙稿「朝日訴訟前史-戦中から戦後にいたる結核療養所の実態と組織化する患者運動の背景をさぐるー」『人間裁判』第10号、特定非営利活動法人朝日訴訟の会、をまとめた。このほかにも研究会などの場を使って同様の報告をまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究の遅れを3年目にしてようやく取り戻すことができた。資料の収集においてはほぼ終了したと考える。今後は解読とその結果の公開に努める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は結核療養所の環境に視点を当て考察する予定である。結核療養所がどのように位置に建設され、それが周辺地域に与えた影響や環境から生み出される情報発信力などを丁寧に分析したいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
本務多忙につき思うような調査先に行くことができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
最終的な資料収集のための調査にかかる旅費、資料など入力作業にかかる人件費、および図書購入費を中心に全額を使う予定である。
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