研究課題/領域番号 |
26380706
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
石原 英樹 明治学院大学, 社会学部, 教授 (20282494)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | sexual minority / social inclusion / queer theory / social movement / tolerance |
研究実績の概要 |
本年度は、主に基礎概念の再検討をフィールドワークなどの方法により行った。 (1)「寛容性」再考:本研究の鍵概念である「寛容性」について、「性的マイノリティーへの寛容性を高めるべき」という常識がある。しかし2年目にメディア等で発言したように、日本では寛容性の高まりに比して「身近に性的マイノリティーがいる」という答えは他国と比較して低い。これは日本の「寛容性」意識の特異性ではないかと考えレビューを行った。 また「寛容性」に潜む異質な他者への留保付きの共感も、主に移民・難民研究者の間で問題とされてきた。これについては「歓待」(デリダ)などの提案があり、レビューを行った。 (2)性的マイノリティーの多様性検討:LGBTなど性的マイノリティーを一つとみることは運動で必要とされたが、逆に性的マイノリティーの多様性(同性愛と性同一性障害の違いなど)を不可視のものとした。性的マイノリティーの連帯を失うことなくその多様性を明確にする必要がある。これに関してジュディス・バトラーなどをレビューした。 また、地域による性的マイノリティーの置かれた立場の違いが青森でのフィールドワークから明らかになった。講演においても特に支援団体の地域での意義を述べた。 さらに海外の研究(Gates, G.J.& Romero A.P., 2009,"Parenting by Gay Men and Lesbians." 他)をレビューしたところ、アメリカでも特定の性的マイノリティーのみが分析されることが多かったことが明らかになった(レズビアンカップル、白人、高学歴、高収入)。 すなわち本研究の主題である「性的マイノリティ」と「寛容性」の意味論をようやく明らかにでいたのであり、これにより性的マイノリティーへの寛容性の量的な把握の準備が整ったといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究はおおむね順調に進展したといえる。当事者および支援団体へのインタビュー調査は昨年度と同様に順調であった。昨年度と同様に「性的マイノリティの社会的排除に対しての提言」は今年度は大学内での研究会を立ち上げ(柘植あづみ世話人、加藤秀一と共に)と、大学内の学生による支援団体との連携などを行い具体的な成果を上げつつある。 調査設計はプロトタイプを完成させ、学内などで実査を行った。また他実査では十分に扱われていない、「性的マイノリティーの多様性」「寛容性の意味内容」を明らかにすることはできたが、それらについて調査設計に入れるところまでは十分には行えなかった。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度はweb調査システムを外注し、調査設計に「性的マイノリティーの多様性」と「寛容性の意味内容」を組み込んで実査を行うことをめざしている。 また、地域差を明らかにするために、引き続き地域の支援団体へのインタビュー調査を継続していく。今後は共同研究という形をとることも選択肢に入れている。
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次年度使用額が生じた理由 |
web調査システム構築の予定がおくれているため。
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次年度使用額の使用計画 |
web調査システムを学内ではなく外部に発注する予定である。
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